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ユキツネの回想
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「今日、部屋を出ていったあとに、ミケんとこ行ったんだけどさ」
椿は出窓の真下の壁に寄りかかってぽつぽつ喋り始めた。
まるで私ではなく、自分に話すように。
「零ちゃんさぁ、体に傷があったんだって」
「……きず」
「本人は喋らないで、って言ってたらしいけどさぁ。
どう思う?」
どう思うなんて訊かれても、私には分からない。
「僕さぁ、あのこ気に入ったんだよね」
椿はニッコリ笑った。
月の青白い明かりが、椿の赤い毛に反射して不思議な色になっていた。
「だから、お前になつかなかったら僕が貰おうと思って。
せいぜい頑張ってね」
椿が行ってしまった後、私は考えた。
別にあいつに執着する理由などどこにもない。
潔く椿に譲ろうか、なんて。
なぜかそれは腑に落ちなくて、椿の言う通り頑張ろうと思った。
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