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夕日
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その日の放課後に行った打ち合わせは新曲についてで、新曲のイメージを固めちゃおうっていうものだった。
「どんなのがいいと思う?」
俺が尋ねると、
「俺はキュンキュンするのがいい」
「僕は...うん、僕も恋愛系がいいと思います」
「俺元気系!応援ソング的な?」
「僕もわちゃわちゃしたの、やってみたい」
2択になった。
俺はどちらかと言えば……いや、どっちでもいいんだが。
「シグシグは?どっちがいいの?」
「俺は……どっちでもいいな……。あ!じゃあ、恋愛応援ソングとかどう?」
「あぁ、恋愛する君を応援するよ!ってことですか?」
「そ!よくない?」
君の背中を後押しするよ!っていう感じで。
その方向で話を進めていき、その日は曲のストーリー構成まで考えて打ち合わせを終えた。
帰り道、Rioさんが銅像前でケータイをいじっているのを見た。もちろん、バレないような格好をしていたが、ケータイのケースが独特すぎるためすぐ分かる。
「Rioさん、こんばんは!」
「お、やほ〜十六夜くん。どうしたのこんなところで?」
「いや、帰り道にたまたま見掛けたので。誰かと待ち合わせですか?」
「うん、ちょっとね」
「……僕らのマネージャー?」
「あは、うん、せいかーい」
「奈津さんなら多分もうすぐ……」
そんな話をしていると、遠くから、さっきまではスーツ姿だった奈津さんが私服で走ってきた。
「玲於〜!!はぁ、はぁ……はぁー、まにあったあ」
「奈津〜♡いいよ、遅れても!仕事だったんでショ?」
「うん、て、あれ?十六夜くん!?」
「あ、ごめんなさい!たまたま見掛けて」
「なるほど!気をつけてね!」
「はい!じゃあまた!」
俺は、去った方がいい雰囲気を察知したためにそそくさと家に帰った。
「ただいまー」
家に帰ると、兄さんからの返事がなかった。寝てるのかな……?
「にいさーん?」
兄さんの部屋を覗くと、ベッドに横になってすやすや寝息を立てる兄さんが居た。
父さんも母さんも、出てこない。
「……にーさん」
呼びかけても、起きない。
目を覚まさない兄が、窓から差し込む夕日に照らされてすごく綺麗で、可愛かった。
「…………、し、……しずく」
勇気をだして、どうせ起きないだろ、と名前を呼んだ。
起きない。
「しずく、……しずく」
起きないけど、いや、起きないから。名前を呼ぶ。
兄さんの隣に乗り上げて、覆い被さる。
こうしても起きないんだ、きっと相当疲れてるんだろう。
「……しずく」
そのまま優しく包み込んでみる。起きない。
「大好き、雫……」
優しく軽いキスをした。起きないから、起きないことをいい事に。
好きが溢れた。
「卑怯だね、俺。……起きてない時にさ。……にーさん、だいすき」
恥ずかしくて、普段こんなこと面と向かって言えやしないから……。
抱きしめて、密着して、夕日に照らされながら。
兄の安心する香りに包まれて、俺もそのまま眠ってしまった。
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