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痛みと関係
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初めて会った時と同じように冷たい目で俺を見ている。
何だかその視線に耐えられなくて、俺は再び下を向いた。
「……あんたのせいよ」
「え…」
五十嵐さんはそう言うと、さしていた傘を地面に落として俺にぐいっと近付いてきた。
「和正が私を見てくれないのも全部、あんたのせいよ!」
パシンと音と共に、左頬に痛みが走る。
どうやら俺は彼女にぶたれたらしい。
突然のことに困惑して、俺は怒りに染る彼女の顔をぽかんと眺めることしかできなかった。
何故俺は突然この人に殴られたのか。
訳が分からない、怒っている理由もわからない。
ヒステリックに喚き散らし俺のせいだと言い続ける彼女をぽかんと眺めていると、本屋の店員さんが慌てた様子で外に出てきた。
あ、いつもレジしてくれる男性の店員さん…。
「あ、あの、どうかなさいましたか?」
「……えっ、あ、いや…」
「和正は私のモノよ……なのになんで、なんであんたなんか……」
「あ、すみません、あの、なんでもないので……お店の前ですみません」
「い、いえ……」
心配そうにこちらを見た後お店の中に戻っていった店員さんに心の中でもう一度謝り、五十嵐さんの方に向き直る。
今度は大泉くんの名前を呼びながら泣き崩れてしまってる始末だ。
…おそらく、昨日俺の代わりに大泉くんに会いに行ったけれど、結局は上手くいかなかったのだろう。
上手くいかなかったのを俺のせいにされるのはよく分からないが、ほんの少しだけいい気味だと思った。
けれどこのままにしておくのも気分が悪いし、お店の人にも迷惑がかかるから、何か声をかけなければ……。
「あの……」
「どうして、あんたなのよ……」
「い、いがらしさ…………」
「和正は私の事が好きだったのよ!?」
そ、そんな事を俺に言われても……。
「浮気したのだって、嫉妬させたかったからで、私はずっとずっと和正が一番だったのに……」
「え、う、浮気……?」
「なんでわかってくれないのよ、なんで……」
五十嵐さんはまた一層泣き出してしまった。
浮気って…それが原因で、2人は別れちゃった、のかな。
う、うーん、そんなの自業自得のような気もするけど。
彼女に今更そんな事を言ったとしても、意味なんてないのだろう。
それにしても、大泉くんと五十嵐さんが上手くいかなかったことと俺と、一体何の関係が…。
「氷室!」
聞き覚えのある声にぱっと顔を上げるとそこには、息を切らした大泉くんが立っていた。
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