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去年と今年
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HRに、学園祭についての話し合いが行われた。
先週は丸々一日授業を休んでしまったから、先週から始まった話し合いには参加してないけれど、内容は仁と三月から聞いていた。うちのクラスの出し物はコスプレ喫茶に決まったと聞いた時は、去年自分がしたメイドの格好を思い出してしまった。
まぁ今年はよっぽどの事が無い限り女装なんてものはしないだろう。それに接客組にならなければ、コスプレもしなくていいんだから。
そう思ってどちらがいいか希望を取られた時も調理組に手を挙げたし、隣の席の女の子が接客組に行って欲しい男子がいると話し始め指名している時も正直関係ないと思ってたからぼーっとしていた、のに。
最後に俺の方を見て手を握ってきた時は心底驚いた。
「そんでー……氷室くん!」
「…………へっ!?」
初めて女の子に手を握られたことに思わずドキドキしてしまったが、今はそうじゃない、それどころじゃないと思い出し彼女を見上げる。
そう、俺は今この子に、接客組に行って欲しい男子として指名されたのだ。
「な、なんで俺……!?」
俺以外に指名されていた大泉くんたちなら分かるが、本当に何故俺が?
「だって去年の学祭もメイド服着てたじゃん?すごく似合ってたし〜」
「あ、それ私もみた!」
「俺もみた!かわいい子がいるって噂にもなってたし」
クラスメイトたちが去年の話で盛り上がっている中、俺は黒歴史が思い出され顔が熱くなっていくのがわかった。てかなんだ噂って。
「ちょっと待って、去年瞬ちゃんはじゃんけんで負けたから女装してただけで、本人やりたかったわけじゃないんだよ〜。女装要員で接客組入れるってんなら、俺は反対!」
仁が俺の席に駆け寄ってきて、俺に抱きつきながらそう言った。そしてついでに俺の手を握ってた女子の手も離させてくれた。
俺が言いたかったことを代弁してくれた幼馴染に心の底から感謝しつつ、意見もまともに言えない自分に嫌気がさす。
実際去年も、じゃんけんに負けた俺に代わってあげようかとか、嫌だったら言うんだぞとか、本番ギリギリまで仁と三月は心配してくれていた。負けたらやるっていう決まり事だったしやっぱりやりたくないって我儘を言うのは無責任だと思ったから本番までやり遂げだけども。
俺が困ってるって思ったらすぐ手を差し伸べてくれる2人に、甘えすぎちゃってるよなぁ、なんて。常々思ってはいるものの、やはりすぐに改善はしないものだ。
「ダイジョブダイジョブ、それは分かってるから!そういうの抜きにしても、氷室くんに接客組入って欲しいのは本当!」
「え……」
「前髪で隠れちゃってるからちょっと分かりずらいけど、氷室くんて何気イケてるし〜」
「え……?」
「おっ、ユカちゃん分かってんねぇさすが!」
「隣の席だしさすがに気付くって〜」
先程までムッとしていた仁が、急に隣の席の子とよく分からない話で盛り上がってしまった。
これは完全に、当日接客をする流れになっている。
正直、目立つことはやりたくないし出来れば調理組の方に行きたいけれど……。クラスの役に立てるのならそうしたいし、今回は仁や三月もいるし、それに…。
チラリと大泉くんの方に視線を向けると、少し心配そうな面持ちで俺を見ていた。一瞬目が合い、思わずすぐに逸らしてしまったけれど。
「……てことで、どうかな氷室くん」
「へ?」
「接客、やってみない?嫌だったら全然断ってくれていいから!」
改めてそう頼まれる。
……うん、まぁ、今年はいいかな、うん。
「仁と、三月がやるなら……」
「わ、ほんと!?仁くんと三月くんどう?」
「俺はおっけーだよ!」
「俺も、瞬と仁がやるなら」
そんなこんなで、大泉くん、九城くん、八嶋くんにも確認をとり全員からOKをもらったため、俺たちは接客組確定となった。
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