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幸せと浮かれ
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「また負けたー!」
姉さんは悔しそうに俺を睨む。
姉さんは、俺の1つ上の高校3年生。
受験生だけど、姉さんも同様頭がいい。
受けたい大学は、今の学力だったら余裕みたいだ。
俺だけ、出来損ないみたいで嫌だ…。
でも、勉強しても成績上がんないんだよねー…。
思わずため息がもれた。
「なーに余裕で勝ったくせしてため息なんかついてんのさ!」
「いてっ……痛いよ姉さん」
姉さんはぽこぽこと俺の頭を殴る。
んー、こんな感じで頭を殴られてるから頭悪いのかも。
「ねーちゃんまた負けたな!」
「うっさいわね、勝のくせに!負け率の方が高いくせに!」
「俺の方が勝ってるしー。ねーちゃん弱いもん」
「何ですってこのがきんちょ!」
まーた始まった…。
2人はこんな感じですぐ喧嘩を始める。
でも本当はすごく仲が良いんです。
そんな2人の喧嘩を止めていたら、キッチンの方から母さんの声がした。
「あんたたち、ご飯出来たよ。ゲーム中断、喧嘩も中断。はやくこっちおいで」
「はーい」
「むー…」
「ほら、姉さん行くよ」
「絶対ご飯食べた後もしろよ、ゲーム……」
「分かったから」
「絶対だかんね!」
「はいはい」
ほんと、子どもっぽいなぁ姉さんは。
それから椅子に座って、家族全員で食卓を囲んだ。
いろんな話をして、ご飯を食べ終わってからまたゲームをして、お風呂に入って自分の部屋に戻った。
部屋に戻り、携帯を見てみると仁からメッセージが届いていた。
『来週の日曜日オフ!何処か遊びに行こうよ!』
来週の日曜日…。
丁度握手会のある日だ。
うー、せっかくの誘いだけど……。
『ごめん!その日は予定があって…』
そうメッセージを送ると、すぐに返信がきた。
『マジかー!残念。じゃあまた今度な!』
仁、優しいよな…。
そう思っていたら今度は三月のことについて話が変わっていた。
ほんと、仁って三月大好き。
そのメッセージにまた返信してから、俺はベッドに寝転がった。
そしてまた、チケットを手に取り眺める。
少しずつ…。
少しずつだけど、確実に距離は縮まってる。
仲良くなれてる。
それも全部、彼が俺に声をかけてくれたり、きにかけたりしてくれたからだ。
もっと……もっと仲良くなりたいなぁ。
そう思ったら、自然と笑みがこぼれて、これが『幸せ』ってことなんだって、思った。
でも俺は、浮かれいた。
浮かれいたんだ…。
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