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怒りと疑問
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「もう和正に近付かないでちょうだい」
彼女はそう言うと、俺に近付き手を出してきた。
「チケット、渡しなさいよ」
「なっ、何で」
「何でって、当たり前じゃない。和正に近付かないでって言ってるんだから当然明日も握手会行ったらダメよ。代わりに私が行くの」
「で、でもさっき……チケット当たったって……」
「あんなの嘘に決まってるじゃない。そもそも、好きでもない作家の握手会に応募するわけないでしょ」
カチンときた。
俺はともかく、大泉くんの好きな作家だぞ。
腹が立って、ムカついた。
こんなに人を嫌になったことはない。
俺がよほど嫌悪むき出しにしていたのか、彼女は俺を見て不機嫌そうな顔をした。
「何よ。言いたいことがあるなら言いなさいよ」
「…………」
その時、ふと疑問がわいて、でかかった言葉を飲み込む。
大泉くんは、本当に俺と一緒に出かけることを望んでいるのだろうか。
同じ趣味の人がいないから、無理に誘ってくれたんじゃないだろうか。
大泉くんが、そんなことを思わない人だと言うことは十分に理解している。
だけど、一度そう思ってしまったら、マイナスな考えが頭から抜けなくなってしまった。
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