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「それに気付いたのは陽太だった。陽太の誕生日の一週間前に呼び出されて聞かれた。俺が本当に好きなのは誰だって」
僕は息を呑み、祐樹さんの言葉を待った。
「陽太だと言った。でも陽太は本当は蒼太を好きなんだろうと、そんな事を突然聞かれて腹も立った。そうしたら嘘吐きと、陽太は笑いながら泣いていた。だから誕生日は一緒に過ごしたくないと言われた。誕生日の翌日に会う約束をして、その時に答えを聞かせて欲しいと言われた」
祐樹さんの声が震えている。
「俺は、考えて、考えて、そうして、お前への想いに気付いた。陽太に気付かされるなんて、本当に最低だ。でも、だからと言って、想いを告げるつもりはなかった」
兄はいつも通りだった。僕を大切にしてくれて、笑ってくれて、優しい兄だった。でもその裏できっと泣いていた。一人、僕を責める事もせず、泣いていた。
「あの日、俺は陽太と別れるつもりだった。陽太への想いは、本当だった。でも、自分の想いに気付いて、もう、一緒にはいられないと思った」
僕のせいで大切な人達が苦しんでいた。
「…待ち合わせ場所の近くまで行くと、人集りが、出来ていた。胸騒ぎがして、人を押し退けて、騒ぎの中心へ向かった。そこにいたのは、陽太だった。何度も何度も、名前を呼んだのに、陽太は、目を覚まさなかった。でも、救急車の中で一度だけ目を覚まして、俺に言った」
目に浮かぶ、傷だらけで、血を流し倒れる兄の姿が。
「…幸せになれ。そう、言ったんだ」
その言葉に、僕の目には一気に涙が溢れ、流れ落ちる。
「俺のせいだと思った。陽太を苦しめたのも、蒼太から大切なものを奪ったのも、全部、俺のせいだと、あの部屋で、謝りながら、ただ後悔するばかりだった」
違う、そう言いたいのに喉が張り付いて、声が出ない。全ては、僕のせいだ。
二人の幸せを邪魔するつもりはないだなんて。
あの兄が僕の想いに気付かないはずがなかったのに。どうして、諦めなかったのか、消せないのなら、どうして離れなかったのか。
結局、僕はいつだって自分の事ばかりだった。
「あの日、お前が部屋に来た時、俺を責めに来たんだと、そう思った。だから責めて欲しかった、俺を、憎んでくれれば良いと思った。でも、お前は陽太の代わりになる、と言った」
だって、それが僕の願いだった。
「お前のせいにするつもりなんてない。その理由も聞かず、あの時から長い間、俺は確かにお前を陽太だと思って抱いた。本当に陽太に触れている気がした。現実が夢で、陽太は生きているんじゃないか、そうやって俺は、自分の罪から逃げたんだ。でも、最近ではお前を陽太だと思う事は殆ど無くなっていた」
「…え?」
祐樹さんが腕の力を弱め、僕の顔を見下ろす。
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