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「あ…天音虍虎……?」
「チッ…いきなり呼び捨てかよ。つか、いつまで貧相な胸晒してんだ?」
「っ!!ひ、貧相とか…言うなし…」
「で?お前がこの手紙の送り主?」
男に指摘され、乱れっぱなしだったシャツをかきあわせて急いでボタンを閉める。
反応からして、やはり目の前のこの男が天音虍虎のようだった。
彼の手には見覚えのあるラブレターが握られており、それが何よりの証拠だ。
小さく頷くと、天音がふぅんと興味なさげに言う。
「お前、俺のこと好きなの?」
「う、うん……」
「その割りには、俺の顔も知らなかったみたいだけど?さっきもあんな奴らと間違えやがって…。」
「ずっと見てたの?!」
「俺のこと好きなくせに、あんな下手くそな奴ら相手に感じてんじゃねぇよ。」
そう言って、再び壁に押し付けられる。
両手は天音の右手によって拘束され、天音の膝が都古の膝の間を割って入り、身動き一つとれない。
怖くて視線を逸らそうにも顎を掴まれ、それすらも叶わない。
銀色の瞳が都古の視線を捉える。
まるで肉食獣に狙われたシマウマにでもなった気分だ。
「俺が怖いか?」
「こ、こわくなんかない…。」
「……相変わらず強情だな。姫島都古。」
「なんで僕の名前っ…、っんぅ!」
ラブレターは偽名で書いたはずが、なぜか天音は都古の正体を知っていた。
そして都古の言葉を遮るように、無理矢理唇を塞がれる。
貪るようなキスに、経験のない都古はされるがまま。
何度も唇を重ねられ、呼吸も追いつかずに酸欠寸前。
やっと解放された時には都古は立っていられず、天音の体にもたれかかるしかなかった。
「気づかないわけねぇだろ……こっちはお前のこと、ずっと見てたんだ。」
「っはあ、はぁ…、見てた、って……?」
「お前の兄貴…都馬さんが俺の恩師なんだよ。死にかけてたところを、あの人に助けられた。」
「兄ちゃんの知り合い?僕、天音さんに会ったことあるの?」
「あぁ。まだお前が小学生だった頃な。俺はそん時中2で、ちょうど荒れてた時期だったんだよ。」
天音の話によるとこうだった。
天音が調子に乗っていると他校の不良たちに目をつけられ始めたのはこの時期からだったという。
それも同じ中坊だけじゃなくて、天音はその強さから高校生の不良たちの間でも話題だった。
興味本位で喧嘩をふっかけた者は、何人相手だろうと返り討ちにされたとか。
しかし、たった一人で十数人に囲まれた時は、さすがの天音虍虎といえどかなりの痛手を負った。
命さながら奴らを一掃して一息ついた頃には、体はボロボロで骨も数本折れていたという。
意識朦朧とし、もはや立ち上がることすらも難しい天音を拾い、家へ連れて帰ったのが都古の実の兄である姫島都馬(ひめじま とうま)だった。
都馬はこの辺りではかなり名の知れた暴走族の長を勤めているが、それまで天音とは何の面識もなかった。
ただ、ボロボロだった天音少年がまだ自分の弟とそう変わらない年の少年だと分かると、いてもたってもいられなかったのだという。
「僕、その時に天音さんと会ったの?」
「あぁ。あの後都馬さんが手当てしてくれて、俺が目を覚ました時にまだガキだったお前が、泣きそうな顔をしながら俺の顔を覗き込んでたんだよ。」
「だって、あの頃は…兄ちゃんが毎日のように怪我して帰ってきてたから…怪我してる人を見るたびに悲しくなってたんだよ。」
「なんつーか、あの時期は周り全てが敵だと思ってたからな…。正直、命を救ってくれたお前ら兄弟が天使に見えた。」
そう言って顔を赤らめる天音を見ると、本当に彼が最凶の不良なのか疑問に思うところだ。
挙句の果てには、こんな臭いセリフを言ってくる始末。
天音の口からこんなことを言われるとは思わず、こちらまで赤面してしまう。
と、同時に覚えたのはやはり罪悪感だった。
天音虍虎が都古のことを知っていて、まさかこんな展開になるとは誰が予想していただろう。
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