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昼食時間。--理樹side--
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(はぁ、まじつまんねぇ...)
四校時終了後、席を立つ事もなく
頬杖をついて外へ視線を向ける
後ろの席には功太の姿はない
急に姿を消したあの日から
功太からの音沙汰は全くなかった
絶対に休学なんて嘘だ
信じない
あの時絶対、体育館倉庫で何かあったんだ
机の中からあの日落ちていた
くしゃくしゃの手紙を取り出す
功太...
どこにいるんだよ.....
「りーき!あ、またそれ見てんのかよ...。元気出せよ、食堂行こうぜ?」
クラスメイトの一人が
肩に手をかけ声を掛けてきた
いつもは食堂に行こうと誘うのは
決まって理樹の方からだったが
功太がいなくなってからというもの
食欲すら失せてしまい
ちゃんとご飯を食べていなかった
そんな理樹に見かねたみんなが
誘ってくれたのだった
「あー..いや、俺はーいいや。ありがと」
笑いながら断ったが
集まってきた皆に手を引かれ席を立つ
「ちょっ...おいっ」
驚いたように声を上げるが
皆はそれを無視しながら教室を出ていく
「元気はご飯からぁー!」
「沢山食べて明るくいこう!」
前を歩く二人が楽しそうに大声を上げて
先陣を切って歩く
「...お、俺は別に」
「理樹、神崎の事が気になるのは分かる。でもどうしようもないだろ...いつまでも考え込むなよ。そして飯くらい食え」
横にいた1人が冷静な声で呟く
その言葉に戸惑うような表情をみせた
理樹にこう続けた
「皆だって神崎の事、考えてるんだぞ。バカみたいに明るく振る舞っているのはお前のためだ。お前、どんな時も俺らの前では笑っていただろ。大丈夫、大丈夫って口癖で。」
俺たちなりのちょっとした恩返しなんだ、と
少し恥ずかし気に囁く声が胸に染みる
そうだよな
俺だけが不安に思ってるんじゃないんだよな
皆、功太の事心配してるんだ
俺の為に皆...
「悪ぃ..ありがとな」
力無く笑ってみせるも
気にすんな、と一言呟いた後
微笑むように笑ってくれた
食堂に到着すると
それぞれの生徒が頼んだ料理の匂いが
立ち込めていた
お腹空いたけどやっぱりまだ食欲が伴わない
靴を脱ぎ、下駄箱にしまう
視線を先へ送ると
見覚えのある気がする顔がこちらを見ていた
その顔は怪しげに微笑み
首を傾げて合図をしてきた
よくわからず
どうも、と自分にしか聞こえない声で呟くと
頭を下げた
既視感のある顔を持つ彼とすれ違う瞬間に
蘇ったように思い出す
(あの時、下駄箱で俺と功太に声を掛けてきた....)
ハッとして後ろを振り返ると
食堂を出て日に照らされている背中が見えた
「何?あいつと知り合いなの?」
「え、嘘だ!俺あいつちょー嫌い!」
「友達いないしなーっ」
数人が同じく振り返り
去りゆく背中に向けて文句を吐く
「あいつ嫌いって...お前、あの子が誰かわかるのか?」
理樹は自分の知らない彼の文句を垂れた
クラスメイトに問いかける
「分かるも何もあいつ賄賂使って転校してきた小野寺蒼だよ!お坊ちゃんて感じで本当態度も悪いよなぁ..ちょー嫌いいい!」
目を瞑りながら言い終えると
食堂の中へ駆け出していった
皆もその後を追うようにぞろぞろと
中へ入っていった
(俺はそうは思わないけどな....)
理樹だけが立ち止まり
もう見えなくなってしまった背中へ視線を送る
「理樹、行くぞ」
呼ばれた声で我に返る
「悪い、今行く!」
再度外を一瞥して食堂の中へ入った
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