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接近。
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朝の功太の表情が脳裏に浮かぶ
僕に嘘ついてないよね...?功太....
ポケットからそっと携帯を覗かせ
付けられたカバーに目を落とす
教壇に立つ先生の事なんて
考える余裕はなかった
蒼は朝の目を泳がせた功太の表情に
心を曇らせるが
好きな人を信じたいという気持ちから
その思いを伏せようとしていた
疑うよりも功太のことを信じてあげよう。
蒼はそう決心すると
携帯をポケットの中にしまいこみ
受ける気もない黒板に目をやる
午前の授業中は
功太のことを考えてはそれをやめる
それだけを繰り返していた
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昼食時間は早めに食べて
図書館で暇を潰すのが蒼の過ごし方だ
今日もそのつもりで1人
食堂にやってきた蒼だったが
入ってすぐに1人の背中に視界に入る
一瞬、考える様な顔をすると
少し企んだ様に笑いその背中に近寄った
「2度目まして...かな?隣座っていい?」
笑いながら声をかけた相手はーー
「...え?あ、いいよ」
ーーー理樹だった
まだ昼食を購入していない蒼だったが
見たところ理樹もまだ買っていないようだった
「ご飯、買いに行こっか」
人差し指で食堂を指し優しく微笑むと
少し不思議そうだったが
おう!と笑顔で理樹は席を立った
「急に話しかけてごめんね。嫌だった?」
相変わらずな優しい笑みで蒼は
理樹へ申し訳なさそうに問いかける
内心では
一欠片も思ってないのだが
「いやいやっ!全っ然!」
理樹は手を横に振り
全身で否定した
「でも、びっくりはしたかな。確か...何度かあってるよな?話し掛けられるとは思ってもみなかった」
笑いながら、頭を掻く理樹を
蒼はどこか不敵な笑みを浮かべみる
だが
何も知らない理樹はそれに気づくことは無かった
ご飯を取りながら
互いの自己紹介をして
何でもない話に花を咲かせる
席に着き話が切れたタイミングで
蒼から口を開いた
「そういえば最近、こう...神崎くん見ないね」
その瞬間、理樹の顔から笑顔が消えた
「...功太のこと、分かんのかっ...?」
「...うん。勿論、彼、人気だったからね...僕もいなくなって寂しいよ...」
理樹は他のクラスの人が
功太を知っていることに驚いた顔を見せるが
蒼が冷静に返すと
なるほどと言わんばかりに納得した
「...急に行方不明っておかしいよな。学校も取り合ってくれないし。家に行ってもいないし。大家に聞いてもはぐらかされるだけだった...」
視線を落とし、机上で拳を握った
蒼はそれを見ながら続けた
「何処にいると思う?」
不思議な質問だが、やはり理樹は勘付かない
「...何処なんだろうな......誰かが誘拐して閉じ込めてるとしたらとっくに警察沙汰になってるって友達にも言われたから......」
見当もつかねぇよ、と
力なく笑ってみせるのは
おそらく蒼を気遣ってなのだろう
「そうなんだ...僕も何かできることがあれば協力するからさ。神崎くんと1番仲がいいのは橘くんだって聞いてるから。元気出してね...?」
蒼は依然握られた拳に自分の手を重ねる
そして
じっと真剣な顔つきで理樹を見た
理樹は少し驚いた様に目を丸くすると
困った顔のまま微笑む
「....ありがとな。小野寺って、本当はいい奴なんだな」
理樹は、先ほどよりははっきりとした笑顔で
蒼へ微笑む
えっ、と困惑した顔をみせる蒼に
理樹は続ける
「皆が小野寺のこと、噂してるのよく聞くんだけど...あんまりいい噂じゃなくてさ。でも話してみてわかった!小野寺はいいやつだよっ」
嬉しそうにありがとうと繰り返す理樹に
蒼も表面上でありがとうと伝える
「...それじゃ、冷めちゃう前に食べよっか」
蒼は手を離しスプーンを持つと
理樹へ食べる様促した
確かに!と笑いながら理樹もさじを持つ
2人はやっと食事を始めた
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