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対面キッチンに立ち、朝食の準備をしながらリビングのソファーに埋もれる様にに腰掛ける雪成を盗み見る。
ーやっぱり顔色が悪いな…ー
ぼぅっとテレビを見る横顔は遠目に見ても解るくらい青い。
学校は休ませようか?なんて考えていると、ガシャンと玄関が開く音がして、微かな足音と共に次男、佳成がリビングに入って来た。
「はぁぁぁぁ。つかれた…ただいまぁ」
「おかえりお疲れ様、佳成。大丈夫?」
リビングの戸を開けるなり盛大なため息と倦怠感丸出しの帰宅の挨拶に充成は苦笑いで出迎えた。
佳成は高校生の時に街でスカウトされ、今はモデルとして活躍している。撮影によってはこうして朝帰りも珍しくない。
売れっ子の宿命、そう言って笑う佳成だが充成としては心配が尽きないのも確かである。
「おっ♪雪成が起きてンの?珍しいな?寝坊助が…」
リビングを見渡し、雪成を見つけると嬉しそうに声をかけようとした佳成だったが、さすがと言うべきかすぐに異変に気が付いた。
「なんかあった?顔色が悪い。俺が帰ったのも気付いてないっぽいし」
「うん…まぁね。また夢を見たみたい」
充成の返事を受けて佳成は眉をひそめた。
「また?最近多くない?雪、大丈夫なの?」
二人は一瞬目を合わせ、心配の色を滲ませた視線を雪成に向けた。
*
「ゆーきー?大好きな佳にぃが帰ったぞーおかえりのチューをしてー」
佳成はあえていつもの調子で弟に声をかけた。
「………あ…佳にぃ!お帰りなさい!ボーッとしてて気付かなかった」
一瞬、虚ろな瞳が向けられたが佳成を認識するとパッと生気を取り戻した。
「チューはしないけどハグなら大歓迎!」
更にそう言って、むちゅーっと唇を尖らせて迫る兄の口元をべしっと押さえ、首にかじりつくように抱きつく。
佳成は弟の小さめの体をきゅっと抱き締めて頭に頬擦りをしながら、仕事の疲れを癒す。
ほぼ毎日と言ってよい程繰り返されるこの一連のやり取りは自他共に認めるブラコン佳成にとって最高の癒しの時間なのだが、今日は少し早めに切り上げて体を少しだけ離した。
「大丈夫か?」
コツンとおでこをくっつけて尋ねると、兄の言葉の真意を察した雪成はちょっと苦笑い。
「大丈夫。いつもの夢を見ただけ。充にぃも来てくれたしもう平気。疲れてるのに心配かけてごめん」
眉をハの字にして笑う姿が痛ましくて、まだ青白い頬にそっと触れた。
「…っ…雪…」
「アッ!もうこんな時間!準備しなくちゃ!!さぁ、僕は大丈夫だから佳にぃもお風呂入って?…充にぃ、ご飯できた?手伝うよ!」
なおも何か言いたげな佳成を遮り、パッと離れると雪成はさっさと朝の準備にとりかかってしまう。
ー 無理してるのバレバレだっつーの ー
こうなったら、何を言ってもムダだと知っている兄達はそれぞれに思うことを一旦胸におさめたのだった。
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