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5Secret
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放課後、部活に行くと真っ先に純が飛びついてきた。
「一祈さーん」
「んー?」
呼ばれて振り返ると、純が真後ろに立っている。
何かと答えれば「呼んだだけです」なんて言われた。
用がないなら呼ばないで欲しい。
それ以前に絡まれるのも鬱陶しいのに、なんだその純粋そうな子供みたいな笑顔。
……ビンタしてやりたい。
「一祈さんって、あの火神って人と仲いいよね」
「あー……誠?」
「……ふーん。 下の名前で呼んでんだ」
「そこ気にするところか? お前の事だって純って下の名前で呼んでるだろー?」
「そうだね」
「……変なヤツ〜」
さっさとユニフォームに着替えて部室から出よう。
このままここにいたら純に火神の事根掘り葉掘り聞かれそうだし、今日はセックスもしたせいでか何だかだるい。
「……」
「……あ、の純?」
「……なに?」
「いや、お前こそ……用がないなら戻れよ」
それにどことなく気まずい空気なのが意味不明だ。
結局、純は何が言いたかったのかとふと考えを巡らせた時、項を冷たい何かがガリッ、と引っ掻いて体が震える。
「な、なに?!」
「……別に」
「お前今日なに? どうしたわけ」
「なんか腹立つわ」
「……はぁ?」
ガシガシ頭を掻いては、機嫌の悪そうな声でポツリと純が呟いた。
俺、なんかしたか?
こいつを苛付かせる様な事をした覚えなんてない。
益々意味が分からない純に俺も微かな苛立ちが湧き上がってくる。
「別に何もないっすよー」
「……ならさっさと着替えろよ。 俺先に出てるから」
「はーい」
いつもなら丁寧に畳む制服も乱雑にロッカーへ押し込むと練習着に着替えて靴も履き替える。
怒ったかと思えばまた変わらずヘラヘラと笑って軽いノリに戻った純を一瞥すると、そのままグラウンドへ向かった。
ジリジリと熱を持つ項は春の風が吹く度に痛んだ。
「あ、一祈先輩こんにちはー!」
「ちはー」
「んー。 お前ら早いな」
グラウンドに着くと、今日は一年が早めにアップをしていた。
何かあるのかと尋ねればこの後それぞれテストをするらしくて、その為に早めに来て体を温めていたらしい。
後輩と下らない会話をしながら笑っていたら、背後に立っていた後輩にそれどうしたんですか?と聞かれた。
「それって?」
「これですよ、これ」
「うなじに何かあった?」
「何かって言うか……あの、言いにくいンすけど。 キスマ?」
「へ?!」
いやまさか、そんなことは無い。
誠には付けるなって言ってるし、俺だって充分気をつけている。
今日だってちゃんと……いや待てよ。
途中からほぼ飛んで記憶が無い。
2ラウンド目に差し掛かる時に一度餓鬼みたいな言い合いをしたせいで、その腹いせに付けられた可能性は十分ある。
相手は誠だ。
俺が嫌がることならどんな小さなことだってするだろ。
「あーそれ昨日かぶれたのかも」
「あ、そうなんスね! だから引っ掻き傷まであるんだ」
「引っ掻き傷……?」
「一祈さん掻きながら強く引っ掻いたんでしょ〜、眠ってるとそうなっちゃいますよね」
「……あ、ああ」
ケラケラ笑う後輩が馬鹿で良かった。
目ざとい奴なら簡単に見抜いてしまうだろ。
かぶれたものか鬱血痕かなんて見る奴が見ればバレバレの嘘だ。
とりあえず一番に気づいてくれたのがこいつで良かったと胸をなで下ろした時、ハッとした。
「……だからあいつ」
脳裏に浮かんだ人物にもっと苛立ちが募る。
多分、引っ掻いたのは純だ。
さっきの部室に居た時に感じた痛みはアイツが鬱血痕を引っ掻いたからなんだと分かって尚のことモヤモヤしてきた。
この痕を見て、腹立つって言ったんだとしたら誠が言っていた事は本当なのかも知れない。
ああ厄介だ……。
こんな体のせいでろくに後輩と話すことも出来ない。
純の事は嫌いじゃないけれどこの体のことを知られるだなんて事は御免だ。
気をつけなきゃならない相手が増えたことに、俺は溜息を漏らしていた。
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