アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
変化
-
本は乾いたが先生が戻ってこないので、俺は暫く保健室から出て行けなかった。
結局昼休みが終わるころに戻ってきて、俺を見た先生は凄く驚いて、そして謝って来た。
話を聞くとどうやら完全に忘れて職員室で喋っていたらしかった。
別に戻ったところで退屈な時間に変わりはないから、軽く会釈だけして保健室を後にした。
教室に戻ると少し視線を感じたけど、机の落書きも消されてて机の中も乾いてた。
いつも通り昼ごはんを食べようと思った所で、コンビニに寄らずに来てしまったことに気付いた。
・・・何で?
「あ、明石。まだ食べ始めて無いよな?なら一緒に食べよーぜ」
なんだか聞いた事のある声で、聞いた事のある事を言われて振り向くと、藤宮がいた。
「今日は昼飯無いから。寝てる」
「うっそっ、無いの?無くなったのかっ?」
何でこいつはこんなに焦ってるんだろうか。
「違う。朝買い忘れたから無いだけ」
「そーなのかぁ、良かったぁ・・・あ、寝るなって、待って待って」
「何?」
「えっと昼飯・・・は無いけどさ、ほら、えと、こっちで寝たら?」
「何で?」
「それは・・・あっ、そうだやるよ、俺の飯ちょっとやる。な?だから来いよ」
藤宮が俺の腕をぐいぐいと引っ張る。
発言と行動が一致してないけどな、俺に選ばせる気はないのかな。
「・・・分かった。くれるなら貰う」
「やったっ、こっちこっち」
藤宮に腕を引かれていると、こちらを見る視線が増えた感じがした。
いつもの事だけど、何かがいつもと違う。
いつもは珍しいものを見るような目でこっちを見ていたけど、今は少し・・・怒ってる?
「おー、明石来たのか。ほら雑用机持ってこい」
「とーまくん酷いっ、もっと優しくしてよっ」
「じゃあ良いよ俺がやる。その代わり二度とお前と口きかない」
「・・・少々お待ちくださーい」
別に机位持ってこれるのに、なぜか新沼が俺の椅子と机を運んできた。
「ほら、座って座って」
「新沼ありがとう」
「へ?」
新沼が一瞬きょとんとして、すぐに頭を抱えてうずくまった。
「・・・ああー、何だよそれー。俺完全に嫌な奴じゃんかー、ずりぃーよー。ううーううー」
「うるさいな、どうした雑用?・・・明石は通常運転だな。ま、良いけど」
「だってさぁ、だってさぁ。ううーううー」
「あーまぁ後で話すよ、とりあえず飯食お、飯。明石どれ食いたい?」
目の前に藤宮の弁当箱が広げられた。
どれでもいいかなって思ったけど、気が付いたら卵焼きを指さしていた。
「これ、食べたい。くれるのか?」
「え、何なに何の話・・・ちょっと待って明石何してんの?もしかして、まさか、ひょっとして、みーちゃんの飯を食おうなんて」「雑用煩い」
「っはは、えっと卵焼きだっけ?良いぜ、食え」
目の前に卵焼きを持った箸が差し出されて困る。
これ、手で取って食べればいいのか?
「何やってんだよ、ほら口開けろ」
言われた通りに口を開けたら、箸と卵焼きが口の中に入って来た。
「・・どうだ?美味いだろ。ふふん、俺が作ってんだぜ」
甘い。
てっきり出汁巻きかと思ってたけど、甘くてふわふわしてた。
こんな味の物食べられるんなら、意外と甘いのも好きなのか?
じゃあ、もう嫌いじゃない。単純だな俺。
新沼が俺の口元を凝視して、矢部が溜息を吐いた。
「藤宮。別にいいんだけどさ、普通ワンクッション置かないか?」
「え?何ワンクッションって・・・あ」
藤宮の顔がみるみる真っ赤になっていく。
「いや、その今のはちがくて。俺、弟居るから、癖で、あーもー忘れろっ」
「いやいやみーちゃん今のはちょっと。ねぇ、矢部さん」
「だから違うってば、そういうのが好きとかじゃなくって」「美味しい」
「は?」
「甘くて美味しい。柔らかいし、大きさも俺は好き。これ美味しい」
味の感想を聞かれていたので答えたら、さっきの新沼みたいにきょとんとした藤宮が、ただでさえ赤くなってた顔をもっと赤く染めた。
「ばっ、そんな風にはっきり言うなよっ、何か恥ずかしいじゃんかっ」
「あらら、明石意外と天然たらしかもね」
「俺も欲しいなぁー、くれないのかなぁー」
「うるさいっ、もうあげないっ。俺が全部食べるっ」
「分かった」
もう一つぐらい食べたかったけど、駄目だと言われたので俺は寝る体制を作った。
「え?あ、違う、明石違うから」
久しぶりに声が近くに会ったけど、不思議といつもよりゆっくり眠れる気がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
18 / 48