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新居
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「遅いよ」
「あ、あぁ悪い。なぁ本当に太一を連れて行くのか?割とうまくやってたのに。なぁ太一、お前もお父さんと離れるのは寂しいよな?」
父さんと離れるのは嫌なので肯定しようとしたら、腕を持っていた光の手に力が入った。
「黙れよ屑が。太一兄さんにもう聞いてるんだよ。お前本当に死ねば?」
怒気を含ませたその声の冷たさは先ほどの比では無く、まるで気温まで下がったかのように俺の全身に鳥肌が立つ。
それきり固まって二の句を告げなくなった二人を無視して光はどこかに連絡を取り、数分後来たタクシーに乗って俺は呆気なく二人の元から去って行った。
「あー、マジで苛ついたわあの豚・・・あ、ごめんね太一兄さん。怖かった?」
「・・・少し」
「ふふっ、可愛い。でも僕いつもはあんな感じじゃないからね、駄目だよ誤解したら」
ね?と光は俺の顔を覗き込んでくる。
その目には先ほどの冷たさは無く、俺の緊張をほぐそうとしているようにも見えた。
「分かった」
「・・・太一兄さんってさ、最初は正直、冷たい人なのかなーって思ったけど。あんまり喋んないだけなんだね、人見知りとか?」
「多分。何話せばいいか分からなくなる」
「ふぅん、じゃあ僕が話しかけたら答えてくれる?」
「内容による」
「あははっ、そっかそっか。じゃあゆっくりでいいから慣れていってくれる?僕も頑張って話しかけるからさ」
「分かった」
そんな話をしながら時間をつぶしていると、十分ほどでタクシーが止まった。
光が一人で暮らしていると言う家はマンションで、周りの建物に比べると少し新しい気がした。
「元々三人で暮らすために買ったんだけど、僕が追い出してあの人たちがすぐアパートに行ったんだよね。マンション自体出来たばっかりだから結構綺麗でしょ?」
心を読んだかのように光がそう説明する。
「そうだな」
「ま、とりあえず入って入って」
光に手をひかれるままにエントランスや廊下を歩いて角部屋の中に入ると、室内はテレビとかチラシの広告とかでよく見る白い壁紙と木目の家具やフローリングで統一された内装だった。
「どう?太一兄さんが来るから掃除頑張っちゃった」
「そうなのか、ありがとう。光」
光はそう言った瞬間驚いたような顔で俺の方を向いて、すぐに笑って抱き着いて来た。
「僕太一兄さん大好きになれそう、頑張ってよかったぁ」
「凄い綺麗だ、嬉しい」
光は、うー、ふふふっ、ぬぅーとよくわからない言葉を発しながら俺の肩口に顔を埋めていたが暫くしたい様にさせると落ち着いた様で、ぷはぁっと顔を上げた。
「そう言えばさ、太一兄さんって勝手に呼んでるけど良かった?嫌じゃない?」
「別に嫌じゃないけど、何で兄さんなんだ?」
「んー、それはほら、その、僕一人っ子だし、親もあんな感じだし、兄弟とか、ちょっと憧れてて」
光はもじもじと服の裾を弄りながら、ちらちらとこっちを見てそう言った。
「そうか、分かった」
「ん、じゃあ部屋案内するね、早く荷物置きたいでしょ?」
「ああ、頼む」
こうして俺は光と暮らし始めることになった。
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