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痛み Side葵
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何かあったのかな。
体育館に行く途中、ふと前を歩く明石を見ながらそう思った。
今日は朝から明石の様子が違った。
返事をちゃんとしてくれるのは前からだけど、返事と一言加えて返してくれるから話も続くし、嫌そうな表情だってしてない。
そんな明石との会話が新鮮で嬉しくて、俺は多分明石以上に機嫌がよかったと思う。
「なぁ、やっぱり明石って何かあったのか?藤宮何か知ってる?」
隣を歩いていたペアの人が、俺の疑問と同じ質問をしてきた。
「やっぱりそう思う?俺はちょっと知らないんだよね、何だろ」
「へぇ、藤宮も知らねぇんだ。何だかんだで一番仲良さそうなのになぁ」
俺の頬はほとんど反射的に緩んだ。
「そうかなぁっ、一番かなぁっ、ふはっ」
「あー、藤宮、ちょっと気持ち悪い」
結局体育館に着くまで、俺の顔が戻ることは無かった。
そしてそれは思わぬタイミングで戻る事になる。
「よっしゃマッチポイントー、明石ナイスっ」
ぱんっ
卓球台を挟んだ向こう側で、明石とペアがハイタッチをした。
たった、それだけの事。
いつもの俺なら喜んでいた筈の事。
でも何故かその時の俺は軽く心臓が締め付けられる様な感覚が有って、目の前の光景から目が離せなかった。
「そんな顔すんなってー、取り返そうぜっ」
こちらのペアの声で我に返る。
・・・そんな顔?
「俺今どんな顔してた?」
「っはは、いやいや凄い顔してたぜ、藤宮って意外と負けず嫌いな感じ?」
「そ、か、ははっ、まーなっ、勝負は勝たねばならんのですよ」
「よっしゃ、じゃあ取り返しますかー」
何で俺そんな顔してたんだろ。
気が付けばさっきまでのふわふわした感じが嘘みたいに無くなって、俺は本気で卓球をしてた。
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