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荒い口調 Side葵
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俺、何であんなこと言ったんだろ。
自分を見る明石の顔が脳裏に焼き付いて離れない。
驚いたような、失望したような、それが混ざって少し泣きそうな顔。
あぁーもぉー俺の馬鹿、ほんと馬鹿。
女子の口から出て来た『弟』『マンション』という二つの言葉。
どちらも明石の事。
どちらも俺が知らない事。
『一緒に帰った男子が』
俺はまだ帰ったことないのに。
家だって聞けなかったのに、教えたのかよ。俺には怒った癖に。
そう思うと胃袋が締め付けられて、胸のあたりがむかむかした。
それから凄く苛々して、頭に血が上って、気が付いたらあんなこと言ってた。
やきもち、かぁ・・・あぁーもぉーどーしよぉー。謝るにも何って言えば良いんだよ。
『ごめん、さっきは言いすぎた』
何をだよっ
『ごめん、嫌なこと言って』
分かってるなら言うなよっ
『ごめん』
・・・絶対『何が?』って聞かれるし、そうなったら結局言わなきゃだし。
「はぁぁー」
「んだよ朝から。また明石関係?」
「とーまぁー、俺さぁ―・・・」
慌てて俺は口を噤んだ。
斗真がいくら事情を知ってたって、これは流石に・・・言わない方が良いかな。
「何だよ、気持ち悪いから最後まで言えよ」
「あー、えっと、数学の課題が終わんなくてさぁ」
「・・・それ明日提出だろ?」
「え?そうだっけ?」
「おう、まぁ分かんないなら別に教えてやっても良いけど」
「あ、じゃあ教えて」
俺は目の前の現実から逃げるように、斗真と数学の課題に縋った。
午前中の授業が終わって昼休み、すぐに明石が俺の席に来た。
朝の事を言われるのかと思って、心臓の鼓動が大きくなった気がした。
「藤宮、昼ごはん食べよう」
「ごめ・・・昼ご飯?」
「今日からは藤宮たちと食べるって昨日話して、藤宮の席に来たら良いって言ってたから来たんだけど・・・あれ冗談だったのか?ごめん俺勘違いして」「ご、ごめんっ、冗談じゃ無くて、ちょっと、あの、ぼーっとしてただけだから」
あーもう死にたい。
明石に忘れるなとか言っておいて俺が忘れるとか。
「ほんと、ごめんな」
「別にいい。他の二人は?」
この時だけは、明石の淡白な反応が嬉しかった。
「えと、勝手に寄ってくるから、先に食べ始めとこーぜ」
「そうか、机持ってくるからちょっと待っててくれ」
「あ、俺も手伝うよっ」
少しでも罪滅ぼしがしたくてそう言った。
「別に良い。そんなに重くないし、ちょっと待っててくれ」
だが、明石の返答はある意味予想通りの物だった。
「そ、っか。分かった。早くしろよな」
「ああ、ごめん」
違う。謝ってほしいんじゃなくて、俺が謝りたくて。
可愛いと言われるのが嫌で使っていた荒い口調が、今更自分の首を絞める。
机を取りに行った明石に声を掛けなおすことも出来無くて、俺は色々なところにぶつけながら机を運んでくる明石を見る事しかできなかった。
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