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告白 side茜
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目の虚ろな翡翠さんの手を握る。俺を捉えないままの目がかすかに揺れた。
「翡翠さん」
「ぁ、かね、くん」
「茜君です」
着替えましょうか、って提案して、脱衣所に運ぼうとしたら、自分で行くってふらつきながらも立ち上がって、よろけながら脱衣所に向っていった。顔を洗って、口をゆすいで、遠慮がちに俺を見て着替えを手に取る。
「着替える、から、後ろ向いてくれる?」
「あ、はい」
見られたくないんだろうな、刺青。俺が後ろを向いてから、ごそごそと布の擦れる音が続く。
「幻滅したでしょ。頭では理解してるんだ、これでもね。でも、なんて言うのかな、心が追いついてないって言うか、身体が拒絶してるのかな、茜君達がいるから大丈夫って、理解してるはずなんだけどね」
ゆっくりと、翡翠さんが紡ぐ言葉は、自分に言い聞かせているようにも聞こえた。何か俺も言おうとして、口をつぐむ。かけるべき言葉が見つからなかったからだ。
「茜君が助けてくれた時、自分でもどうかしてたと思うよ。作られた抱き人形としての僕で接してしまったし、見られたくない所を見られて、開き直ってたんだと思う。気持ち悪かったでしょ」
困った時の、翡翠さんの笑い方が最後に漏れた。否定しないと、否定したいのに言葉が引っかかって出てこない。
「また病院に行かないとな~とか、真音君に迷惑かけちゃうな~とか、そんな事考えちゃったし、実際に真音君にはまた迷惑かけちゃった。年上なのにねぇ」
「違うと、思います」
え、と翡翠さんの言葉が止まる。布の擦れる音は止まっていた。
「真音は、そんな事一言も言ってませんでした」
「言ってないだけだよ」
翡翠さんに接する真音を見てわかった。真音は翡翠さんを大切にしているから、そんな事思うはずがないって。
「もう、そっち向いていいですか」
答えを待たず、振り返る。なんだ、着替え終わってんじゃん。
「翡翠さん、好きです」
嘘偽りの無い言葉を贈る。
翡翠さんは顔を真っ赤にして、目を泳がせて、シャツの袖で口許を隠して。
「きたない、よ」
「汚くないです」
「き、たないよ!」
「悪趣味な刺青がですか?お袋が刺青を取る手術をやってくれるって決まってますよ」
「いっぱい、いろんなひとに、あににも……ぉ、おかされたし」
「俺が上書きします。そんな事思い出さないくらい甘やかして、俺無しじゃ生きられないくらいにします」
「ぁぅ……」
ぷしゅうぅって湯気が出るくらい真っ赤になって、ずるずるへたり込んでしまった。
「あかねくんは、ずるいよ」
「ずるいですか?」
小さく頷いて、顔見ないでって。見たくなるに決まってるじゃん。可愛いんだもん。
目線を合わせて、俺より小さい手を取った。
「一生、翡翠さんを幸せにします」
「しあわせに、してください」
キスして良いですか、って冗談で聞いたら、いいよって小さな声で言ってくれた。まじか。
柔らかそうな唇にそっと自分のを重ねる。
そっと離せば、いつものようにふにゃりと笑う翡翠さんがいた。
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