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制裁
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小瀬の家を出て、タクシーに乗る。
石川は、僕たちを家まで送ると言ってきかなかったが、気分的になんとなくそれが躊躇われたので、こうして来夏と二人でタクシーに乗った。
「………来夏、ありがとう」
突然、感謝の言葉を述べた涼真を見て、来夏は驚いた顔をする。
そして、涼真が静かに微笑むと、ばつが悪そうに目を逸らした。
「俺、何もしてないよ」
「ううん、そんなことない。来夏が……」
途中まで言いかけたところで、来夏にふわりと頭を撫でられた。
今まで堪えていた涙が一気に頬を伝う。
「……僕…っ…!……ごめ、…っ……」
来夏が両手を伸ばし、涼真を胸に抱き寄せた。
「……いいよ。好きなだけ、泣いて」
ーー最初、和哉に告白された時、かなり驚いた。
和哉のことは一番の親友だとずっと思っていたし、和哉を大事に思う気持ちは親友としてのそれだと思っていたからだ。
だけど、無理矢理抱かれたあの時も、怖いという気持ちはあったが、別に嫌な気はしなかった。
むしろ、もっと和哉に溺れたいと思ってしまう自分がいたのだ。
気づけば、来夏のことよりも和哉のことを考えている時間が多くなり、いつしか和哉を自分のものにしたいーー和哉と恋人になりたい、そう思うようになった。
だが、現実は違った。
和哉は僕に向けていたその感情を小瀬に向け始めたのだ。
どんな経緯で付き合い始めたのかは分からないが、もし神様がいるのならば、きっとこれは神様からの最低な僕に対する制裁のようなものだろう。
かなり我儘を言っていることは分かっている、来夏がいながら和哉に気持ちが傾くということ自体が最低な行為だ。
それなのに、僕は今も貪欲に和哉を求めながら、来夏を都合の良い居場所にしてしまっている。
ーーけじめをつけなくてはいけない。
涼真は涙を拭うと、静かに来夏の胸から身体を離した。
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