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スリーピース1
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「なぁー、ちゅーしたことあるー?」
夏休みが明けて間もなく始まる中間テストに向けてお泊まり勉強会を開いてみたものの、早々と集中力が切れたのが今回の勉強会の言い出しっぺである小口(オグチ)だった。
「はぁー?お前なに言ってんの?」
そう言いつつも、手を止め眼鏡を外したのは帰宅部の中道(ナカミチ)。ローテーブルを挟んで中道とは逆側に座っている剣道部の大月(オオツキ)は対照的にカリカリとノートにペンを走らせている。
「だってさー、今日帰りがけに聞いた話しだけどオタ研の黒木がついに彼女できたらしいんだよー」
「まじか!!」
「まじでー!コミケで知り合ったんだってー。やばくね?なんで黒木には彼女ができて俺らにはできないのー?」
「くっそ!オタ研のくせに…」
「だよなぁー!一次元でリア充しやがってー」
漫画研究部ーーーー通称オタク研究部ーーーーーの部員への文句(ほぼ妬み)をひとしきり話し、小口は大きな溜め息を吐いた。
「っつーかー、クラスで彼女できたことないの俺らだけじゃん。どーしよー」
小口がローテーブルの下で足をバタバタさせたのでテーブルがカタカタと揺れる。
するとシャープペンの針が小さく折れる音がして、今まで無言を貫いてきた大月がようやく顔を上げて一言。
「小口、下らないことくっちゃべってないでさっさとやれよ」
しかし、完全に集中力が切れてしまった小口は大月の言葉に口を尖らせた。
「俺には死活問題なんですー、三日前に彼女できた大月とは違うんですー」
「……その語尾伸ばす癖やめろ。女子高生か」
大月の話を完全に無視して、小口は勢いよくテーブルに突っ伏した。
「うわぁぁーーん!中道ぃ俺ら一生ドウテーだったらどーするー!?」
「まじか!!何で俺らには告ってくる女子いねーんだよ!需要と供給のバランスおかしいだろ!」
小口のお馬鹿な発想にいつものように中道も同調してバンバンとテーブルを叩く。
小口もテーブルの下で足をバタつかせているためガタガタとテーブルが激しく揺れる。
大月の持つシャープペンの芯がポキッとまた折れる。
テーブルを揺らされたため、ノートの紙面はみみずのような文字が盛大に踊っており最早解読不可能だ
。
はぁー……
額を押さえながら大月は大きな溜め息を吐いた。
どこまでも突っ走っていくこの小口、中道、二人のストッパーが大月だったりする。
元々そんな性分ではないのだがこの二人とつるんでいるとストッパー役にならざるをえないのだ。
今やクラス名物のトリオ漫才だと揶揄され、担任にすら「大月、頼む」と任されてしまう始末だ。
躾のなっていない小型犬(小口)と大型犬(中道)のブリーダーにでもなった気分である。
「せめて可愛い女の子とちゅーしたい!ファーストキスなんてむしろ早く捨てたいしー!」
「男がとっておくとかキモイだけだよな」
完全に暴走しだした二人に ああ、もう!ーーーーと、心の中で舌打ちする。
「……分かった。今度彼女に、ご…合コン開けるか聞いておくから」
ストッパーだからこそ心得ている、この場を収束させるには効果的な一言だった。
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