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3 過去~出逢い~
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「ねぇ、君」
最初、その声が俺に向けて話し掛けられているなんてわからなかった。
「あっ、あっ待って!君、ねえ!!」
えらく必死な声にそちらを見れば、真っ直ぐに俺を見つめる瞳とぶつかる。
そこで初めて、声の主が俺に話し掛けていたのだとわかった。
「えと、すみません?・・・何か?」
見たことのない顔だった。
声を掛けられるような身に覚えもない。
「あっ!あぁ、ごめんね?急に呼び掛けたりして、びっくりさせてしまってすみません。えと・・・実は俺、美容師で、モデルさんを探してまして、その・・・君に俺のカットモデルになってもらいたいんだ!!」
・・・この人が必死で話しをしているのはわかる。
真剣、なのも。
けど、内容が怪しすぎた。
なんだ?モデル・・・?
「あっ・・・と、すみません」
頭を下げ、俺はその場から離れようとする。
「ま、待って!どうしても、君にお願いしたいんだ。お願いです。どうかちょっとだけで良いから、話しをさせて下さい!!」
普段なら、絶対に無視していた筈だ。
なのに、追いすがるその人のあまりに必死な様子に、その人のあまりに真剣な瞳に、俺は絡めとられてしまった。
「・・・はぁ、少しなら」
俺のその言葉に、その人は満面の笑みで
「ありがとう」
と言った。
不覚にも、その笑顔に俺は思わず頬を染め見惚れてしまった。
高校3年生の夏休み、ある暑い日の出来事。
この日、俺は人生で初めて塾をサボった。
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