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10 マサト君観察日記~良人から見たマサト君~
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「あっ、また来てる」
あきこの声に外を見れば、そこにはマサト君がいた。
あの、初めて彼に声を掛け半ば強引に連れてきてカットをした日以来、マサト君はほぼ毎日のように店を覗きに来ていた。
あきこが、止せば良いのに外のマサト君に手を振る。
あ~ぁ、ほら、慌ててどっか行っちゃったじゃない。
ジトリと、一瞬だけあきこに恨めしげな視線をやる。
「美容師に興味持ったんですかね?暑いのに、よく毎回見に来ますよね」
あきこはそんな俺の視線には気付いていないようだ。
呑気に話し掛けてくる。
「あきこ、タイマー鳴ってる」
「うぇっ?わあ!!本当だ。よしさんチェックお願いしまーす」
「・・・はぁ」
まったく、カラーチェックくらい自分で出来るだろうに・・・。
小さくため息をつき、言われるままチェックをしに行く。
ふむ・・・まぁこのまま流しても良いっちゃ良いんだけど、
「山城さん、最近カラーの色落ちが早い気がするって言ってましたよね?」
俺の問いかけに、そのお客様は頷く。
「うん。あきこタイムあと5分足して、それからお流し。山城さん、どうしても時間が経つと色落ちしちゃうけど、なるだけしっかり色を入れて落ちにくくしておきます。もう少しでシャンプーしてもらいますからもうちょっと待って下さいね」
そう声を掛け、お客様の側を離れる。
あきこは元気よく返事をし、タイマーをセットして空いた時間で出来る仕事を探しに行った。
俺は、裏へカラーチェックで汚れた手を洗いに行く。
それにしても・・・。
本当にマサト君は見てて飽きないな。
ふっと、口元が思わず綻ぶ。
チラッと表の方を覗けばマサト君は先ほどより少し離れた場所から、また店の中を見ている。
就職活動でサロン見学にやってくる美容学生なんかよりもよっぽど熱心だ。
もうマサト君が見学に来るのは当たり前みたいになっているけど、最初の時は相当びっくりしたなぁ。
マサト君は、カットをした翌日にお店の前にやって来た。
そわそわと、落ち着きはなく、何か用があるのかと思えばお店の中に入ってくる様子はない。
みかねたスタッフが話を聞きに行くと、仕事をしている所が見たいのだと言う。
なら、中に入って見るかと誘えばそれは迷惑になるので遠慮したいという。
まぁ、お店の周りをうろちょろされるのも不審だし、迷惑といえば迷惑なのだが、しばらくすると丁度良い距離感を掴んだようでこちらも特にマサト君が気になることはなくなった。
連絡先は渡してあるのだが、連絡してくる様子はない。
再びマサト君の方を見ると、もう居なくなっていた。
明日も、また来るのだろう。
マサト君は、眼鏡からコンタクトに変えて髪もワックスなどつけないと言っていたのに最近はきちんとセットしているようだ。
俺がカットしてあげたことでマサト君が変わったというのが少し誇らしく、カットを気に入ってくれたのだろうと思うとプロとして単純に嬉しい。
きっと、今日もマサト君からは連絡などないのだろう。
ならば・・・。
俺は、頬が緩むのを感じる。
こちらから、連絡をしてやろうと思った。
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