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とも11
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“ゆうへ
突然の手紙で驚いてるかな、、?
見つけてくれてありがとう。
これを読んでるということは、目を覚ましたということだよね。
退院、おめでとう。
あれからどれくらい経ってるんだろう…
傍にいれないことを先に謝っておきます。
本当にごめんなさい。
ゆう僕はね、今フランスにいます。
これを書いている時はまだ日本だけど、、
フランスに留学する予定です。
一人の時間がほしくって…なんて言ったら、ゆうはまたあの時みたいに“わかった”って頷いてくれるかな?
美術部に入ったのがつい昨日のことのようで、あの頃に戻れたら…やり直せたらどんなにいいだろうかと、何度も何度も思いました。
僕はたくさんの人を傷付けて多くのモノを失ったんだと、今改めて実感しています。
そしてその最たるものがゆう、大切な大切な僕の弟だということも…
ゆうの傷はもう僕なんかがどうかしてあげられるようなものではなくて、、
それ以前に僕にはもうそんな力はないんだなと痛感しました。
ようやく塞がりかけた傷口をまた開いてしまうのが恐い、、
だから僕は…ゆうの傍にいない方がいいのだと、そう判断しました。
ゆうは逃げたって思うかな?
うん…その通りかもしれないね、、
でも、これだけは伝えなくちゃいけないと思って手紙を書いています。
ゆう?
僕はゆうが生きていてくれて、
本当に本当に嬉しいよ、、
生きていてくれて
ありがとう…
もう少し時間が経って、お互いに気持ちも落ちついて、心の整理が出来たとき…
また会えたらいいね。
その時はゆうの笑顔が見られると信じています。
とも”
カタンッ
ともはボールペンを机に置いた。
黒く埋め尽くされた紙を二つに折り畳む。
静かに椅子を立ち上がると、とものベッドへ歩み寄った。
布団はすっかり綺麗に整えられている。
それでもともは愛おしそうにそっと布団を撫でると、まだ微かにゆうの匂いが残る枕に顔をうずめた。
「ごめん…ごめんね、ゆう…」
枕はともの涙を受け止めると、まるで自分のものにでもするかのように次々とその水を吸収していった。
ともの全てを余すことなく飲み込むように…
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