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会長
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一宮の手を振り払い立ち上がる。一宮は俺より数センチだけ低く背は180ぐらいか。
「お前は俺が今、何をしてるのか分からないのか?」
「ああ!? 生徒会の仕事じゃねぇのか?」
「そうだ。お前たちが放棄した仕事だ。既に期限の切れてる物もあり早急にやらないといけない。分かるか?」
まるで小さな子供に言い聞かせるように言えば、一宮のこめかみに青筋が浮かんだ。
「ーーはぁ。本当の事言われて気分悪いか?」
「うるせぇ! 貴様には関係ねぇだろ!」
「関係ないわけあるか。俺は顧問であり、お前たちのせいでココに呼ばれたんだからな」
一宮は首を傾げる。俺はパソコンの画面に過去の卒業生のデータを出し、一宮を手招きした。俺の横に来た一宮はそれを見て目を瞠ってる。
「一応、ここの卒業生で中1から6年間会長を務めた。その功績から、理事長から直にお願いされて来た」
ここまで言えば理解出来ただろう。再び座り、仕事に取り組む。
「……説教しないのか?」
「してほしいのか?」
「……」
返答がなかった。仕方なく手を止め、一宮を見上げる。一宮の顔は何とも言えない微妙な顔をしていた。
「お前たちは俺からしたらガキだ。ガキは大人に迷惑を掛けていいし、甘えていいものだ」
「……」
立ち上がり、あまり身長の変わらない一宮の頭を荒く撫でる。
「触んな!」
「ククッ。今のうちに沢山失敗しとけ。社会に出たら今のようには出来ないしな」
「うるせぇ……」
本当は仕事を優先すべきなのだろうが、長い目で見たら一宮と話す方が最善かな。
一宮をソファーに座らせ、俺は2人分の紅茶を淹れて1つを一宮前に置き向かいのソファーに腰を下ろした。
「聞きたいことがあるけどいいか?」
「……何だ?」
「一宮は如何して生徒会の仕事をしなくなったんだ?」
「……真純(マスミ)を他のヤツらに取られたくなくて」
案外、素直に答えてくれたのか内心驚く。悪態つくと思ったんだがな。
真純……、この学園をこうした元凶の名前だろう。
「そうか。そいつの何処に惚れたんだ?」
「真純は俺様を対等に扱ったんだ。この俺様に“見た目で判断するな!!”って、“オレたちは友達だ!!”って」
一宮の後継者。それは、重責であり小さい頃から、後継者としての振る舞いを求められたに違いない。周りは一宮の力を恐れ、壊れ物を扱うかのように接するのだろう。
何でも言い合える友達なんて、一宮には1人もいなかったんだろう。そんな時に、真純という奴の言葉は一宮の心を軽くしたんだな。
「頑張ったな」
手を伸ばし、一宮の頭を優しく撫でる。
「……貴様……、あんたは変だ」
今度は振り払われず、大人しくしていた。呼び方も貴様からあんたとなり、一宮の中で俺の評価が上がったらしい。
「そうか?」
「普通は説教するだろう。それでも教師かよ?」
「一応、教員免許はある。教師として働いた事はないけどな」
一宮の家ほどではないけど、俺の家も財閥であり俺は次男になる。幾つかの会社を任されていて、教員免許は飾りとなっていた。
「……俺様は間違えたのか?」
「どうだろうな。間違えたと思うのか?」
「……分かんねぇ」
答えはやらない。自分で考え自分で導き出さなければ意味がないから。
「悩め悩め」
「嫌なヤローだ」
「どうも」
「褒めてねぇよ!」
「それじゃ俺は仕事の続きするな」
「……」
応援の一言もないのか。まぁ、いいけどな。
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