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「ええっ!? 僕が帝王様と共演!?」
ガタッと椅子が倒れる。
それよりも馨の声が大きく響く。驚きを隠せなくて、心臓がバクバクとうるさく脈打っていた。
「そう。小池監督の新作の相手が帝王様。頼むからヘマはしないでくれよ……」
「ど、どうしよう……」
汗ばむ手をぎゅっと握る。その拳は震えていて。
「何、やめとくの……うげえっ!」
それに気がついた三津田は無駄話だったか、と思いながら言うと、馨が勢いよく抱きついてきた。
小さいくせに強く抱き締めてくるものだから、苦しいと訴えると、馨はごめんなさいとすぐに離れた。しかし、その瞳はキラキラと輝いていて、まったく謝罪をしているとは思えなかった。
「どうしよう、嬉しい! 僕、頑張るね! みっちー!」
「あっそ……俺はお前がヘマしなけりゃいんだよ。今日みたいにな!」
「あうっ」
──演技ヘタクソ。萎える。
──顔は可愛いからって、よくこんなやつ採用したな。AV業界も落ちたもんだ。
馨は、AV業界のネコ役ワースト1だ。
大学で就職出来ずに卒業してしまい、生活費に困っていた時に今はマネージャーみたいな役割をしている三津田にスカウトされたのが始まり。
「エッチなこと……?」
「君、可愛いからね。儲けるよー。どう、お金欲しいんでしょ」
頷いたのは、それだけお金に困っていたからだった。
確かに、1日貰えるお金は多かった。しかし、それなりの対価があった。
「ひぐ……い、いたい……」
「馨ちゃん大丈夫? でも、ごめんね。何回も止めてたら、撮影進まないから……」
「や、いやあああ……っ」
最初は痛くて血がでた。気持ちいいことだけだよ、なんて嘘で馨にとっては地獄そのもの。そして、次の相手もまたその次も、身体の相性はことごとく最悪だった。
気持ちよくないから、演技しかなくなる。けれど、本当の気持ちよさを知らないからぎこちない演技になってしまう。
「あっ、ああっ……」
「チッ、ヘタクソ……もっと締めろ」
「っ!?」
AVだから色んなプレイをした。ちょっと過激なのをすれば、貰えるお金は増える。痛みや苦しさは増すが。
それでも、この仕事を続けられる本当の理由は──。
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