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撮影当日。
帝と共演する知らせが入ってから撮影までだいぶ間が開いていたが、撮影当日となってしまうと、意外とあっという間なものだった。
やはり、AV業界No.1の帝の撮影なだけある。スタッフはいつもの撮影より多目に配置して、見物客もある程度いるようだ。
馨も馨で、想いを寄せている帝が相手だから、気合いが入っていた。髪も身体も綺麗にして、洗浄もいつもより丁寧に行った。
「ど、どうしよう。みっちー……緊張してきた……」
帝が、好き。
出会って、好きだと自覚して、日々膨らむ気持ち。すごく、胸が苦しくて。
帝が来る前からこんなに緊張していて、大丈夫なのだろうか。心臓がバクバクしているのが、時間が経つのにつれて大きくなっている。
そんなの、撮影が始まったら死んじゃう──!
「お前、緊張どうこうじゃなくて、何かやらかすだろ……謝る俺の立場になってみろ」
「ふええん……みっちー酷い。そこ、励ますとこ」
こんな心境になっているとは知らない三津田にバッサリ斬られ、馨は泣きそうになる。
そんな馨に三津田は呆れた顔をして、深く溜め息を吐いた。
「ふええ、とか言うな。男なのに気持ち悪い」
「男なのにお尻ハメハメされ……」
──てる僕に、それを言うの?
ぽけっとした顔で、そんなことをさらっと言う馨。
「馨、その言い方どうにかして。ていうか、もういいから黙ってなさい」
「あい」
天然おバカ。ほんとに、世話が焼ける。
再び深い溜め息を吐きつつ、それでも可愛いと思ってしまう自分に苦笑する三津田であった。
スタジオがざわざわとし始める。どうやら、帝がスタジオ入りしたようだ。
馨は口の中に溜まっていた唾液をごくりと飲む。
いよいよだ……。
「み、みっちー。今日、本当にいつも以上に頑張るから。帝さんに嫌われたくない……」
「ああ」
きゅ、と下唇を噛んで俯くと、三津田がポンポンと頭を軽く叩いてくれた。
ちょっとだけ、心が落ち着いた気がする。それでも、心臓がバクバクしれいるのは、変わらないけど。
たくさんの人に囲まれて、帝が姿を現した。すぐに馨たちのことに気づいてくれたみたいで、笑顔で近寄ってくる。
ドキッと大きく跳ねる鼓動。熱がじわあ、と広がっていく。馨は思わず胸を押さえた。
「みっちゃんとこの子猫ちゃんだ。今日はよろしくな」
「は、はいっ! よろしくお願いいたします!」
ガバッと勢いよく頭を下げた馨に、帝はプッと吹き出した。
かああ、と馨の頬が真っ赤に染まる。
「ははっ、確かタメなんだろ? 敬語いらねえよ。気軽に話そうぜ」
「はい……あ、うん。ありがと」
顔がまともに見られない。次の言葉も見つからない。
馨は俯いてしまった。本当、こんなにダメダメで撮影はうまくいくのだろうか。
何も喋らなくなった馨を見て、三津田が口を開く。
「帝。今日は馨をよろしく頼むよ」
「ああ、みっちゃん。久しぶり。ほんと、全然会わなくなったな」
「嘘言うなよ。結構、帝のこと見かけるぞ」
ほとんどは、馨が見物する付き添いだけれども。確かに、こっそりと覗いてたら気づくわけがない。
「え、そう? でも、こうやって話すの久々」
「まあな」
三津田が、ふっと笑うと、スタッフから馨と帝に声がかかった。
「馨、行こう。最初に説明あっから」
「う、うん」
いよいよ、撮影が始まる──。
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