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ブオン、とドライヤーが温風を出して、馨の濡れた髪を乾かす。乾いた髪はふわふわして、帝の指に柔らかく絡んだ。
あの後、丁寧に後処理をされ、すべてを帝に任せっきりで事無くを終えた。後処理の件に関しては、記憶から抹消したいくらい恥ずかしい事件だったが。
「よっしゃ。おーわり、と」
「ありがと、帝」
「どういたしましてー」
帝はニッと笑うと、今度は自分の髪を乾かし始めた。手櫛で馨の髪の毛を気遣うように乾かしていたのに対して、自分の髪は頭を振って温風のみで乾かす大雑把さ。
馨は、思わず笑ってしまった。
「んんー? なんか可笑しい?」
「あ、いや……髪、ボサボサになるよ?」
実際に、くせっ毛なのか、ところどころ乾き始めた場所が跳ねている。せっかくまとまって綺麗だったのに、もったいない。
しかし、帝はガシガシと髪を掻き回して、粗雑なやり方は相変わらずだ。
「あー、いいのいいの。どうせ次、撮影あるしな。テキトーに髪弄ってくれっから」
「撮影って、まだ仕事あるんだね」
「ああ」
やはり、帝王様と呼ばれる帝のことだ。今日の仕事はこの撮影のみの馨とは違って、きっと忙しい日々を過ごしているのだろう。
そもそも、ナンバーワンとワーストワンでは差がありすぎる。
馨は、うつむいて小さく溜め息をついた。
「馨はこれで終わり?」
「うん、終わり」
「そっか。無理させたしなあ……ゆっくり休んで」
「ん……」
うるさく音を立てていたドライヤーが止まった。
もう乾いたのだろうか。いや、あんないい加減にやっていた帝のことだ。あまり乾いてないに違いない。
そう思うと、やはりどこか可笑しくて、馨は微笑みながら顔を上げた。
すると、
「ひゃああ!?」
「うわ、うるせ! ばか、驚きすぎだっての!」
「う……あ、ご、ごめん!」
帝の顔が目の前にあって、大袈裟に驚いてしまった。
バクバクしている心臓を鎮めようと胸を押さえるが、なかなか落ち着いてくれず、体温が上昇していくのを感じる。
「ふは、顔赤いよ?」
「も……あんま見ないでよ……」
静かな空気が広がる。あまりにも静かすぎて、このドキドキが聞こえそうだ。
そんな空気が、余計に馨の羞恥心を煽る。
帝はというと、依然としてニヤニヤと口角を上げていて、何か言いたそうだ。
他に別の話題をとりあげて、紛らわさなければ。そう思い、色々と考えを巡らすが、こういう肝心な時こそ、出てこないものである。
もう耳まで熱いのが、感じ取れるまでになってきている。困りに困ってチラリと帝を見上げると、帝が小さく舌打ちするのが聞こえた。
「ったく、わかりやすすぎ……」
「え……?」
熱い吐息が、唇に触れる。
馨の中で警笛が鳴ったのは、唇が重なる寸前のことだった。
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