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夕飯を済ませると、食器を下げる暇もなくテレビの前に連れて行かれDVD鑑賞会が始まった。
そのままになっていたオセロ盤は、坪井さんによって夕飯の前に片付けられていた。やはり天馬は自分は見るつもりがないらしく、DVDデッキにディスクを入れるとすぐに教材を開いていた。
再生されたDVDは洋画だった。以前、自分はこれを見たことがあったのだろうか、所々聞いたことがある台詞や見覚えのある場面があった。
映画は、苦手だ。大袈裟なくらいの大きな物音に、画面から溢れんばかりの眩しい光。画面の向こうの匂い、温度、湿度、感触、痛みが容易に想像できてしまうのが、昔から怖かった。
隣を盗み見ると、大画面に映される迫力あるワンシーンも、ステレオから発せられる大音量も、天馬は何も感じていないかのように細かい文字を目で追っていた。
先程言っていた、天馬がしたいことは俺に映画を見せることだったのだろうか。勉強の邪魔をしてはいけないと思い、おとなしく画面を見つめていた。
事故で両親を失った少年は、怪しげな男と出会い魔法の国へ誘われる。自分の持っていた不思議な力に戸惑い、困難を乗り越えて知らない場所でできた仲間との友情を育み、たくましく生きてゆく。そんな非日常に溢れたストーリーだった。
「天馬、ごめん。先にお風呂もらってもいいかな?」
「え、いいけどこれ好きじゃなかった?」
「そういうわけじゃないんだけど…ごめんね。」
まだ映画の途中だったが席を立ち、早足で着替えを取りに向かった。天馬の驚いた顔を思い出して申し訳ない気持ちになる。
映画の中に登場した、人の何倍もの大きさで首が3つある犬のような、架空の生き物。それが主人公に襲い掛かったシーンを、10歳に満たない頃に昔住んでいたアパートで、「渡部さん」と見たことを思い出した。
この生き物が怖くて、以降、映画が見れなくなったのだった。
怖がって震える俺を、「渡部さん」が後ろから抱きしめてくれた。その時は何も思わなかったし、むしろ安心感を覚えていた。
今思い出すと、身の毛がよだつ。
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