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22本目、落し物。
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「もしもし」
「もしもし、歩生くん?」
「はい。もう大学から出るので向かいますね」
「うん。了解。こっちはもう少しかかるかな。ごめんね、先に座ってて」
大学内を歩きつつ長野さんと電話をする。
何度か通話をしたことはあったけれど、待ち合わせの約束となるとなんだか恥ずかしい。
これから会うんだという事実がより強調されているように思える。
長野さんに会う前にそろそろ薬飲まないとならないため僕は一度休憩スペースに向かった。
休憩スペースのベンチに座り自販機で買った水で薬を飲む。
これから喫茶店に行くのに水を買ったことに後悔をしている。
でも薬は飲まないと迷惑をかけてしまうかもしれない。
「あれ〜?可愛い可愛いあゆくんじゃ〜ん」
「なっ…」
だらしない喋り方の主は篠宮さんだった。
また周りに女の人がたくさんいる。
苦手な篠宮さんに、苦手な女の人たち。
早くこの場から立ち去りたい。
「あー!まさくんお気に入りの一年生くんだぁ」
「可愛い!」
「本当だー!まさくんのお気に入りなだけあるー!」
周りの女の人たちは篠宮さんの周りから離れると僕を囲ってきた。
誰かの香水が物凄くキツくてつい息を止めてしまう程だった。
あまりこの状況が長く続くと目眩がしてしまいそうだ。
「ちょっとやめて。あゆくんは君らのお人形さんじゃないんだから」
お人形さん…バカにされているように聞こえた。
僕は確かにこの人たちのお人形さんじゃないけれど、篠宮さんのお人形さんでも無い。
投げられる言葉全てがバカにしてきているように聞こえる。
「あゆくんはこれから暇なの?遊ばない?」
「忙しいです。じゃあ」
僕は囲ってきている女の人たちのせいでその場から出ようにも出られなかった。
早く逃げたいのにどうして上手いこといかないのだろうか。
そのうち一人が察したかのように僕の傍から離れると、ぞろぞろと皆も離れていった。
その先にはニヤついている篠宮さんが立っていた。
「じゃあいつ遊べる?」
「…いつも忙しいです」
「そんなことある?俺避けられちゃってる?」
避けられてると思うのならもう関わらないでくれと言いたかったけれど、気の弱い僕は思うだけで口からは出せなかった。
これから長野さんと会えるという楽しみで気分が上がっていたのにこの人に会ったことにより一気に気分が落ちてしまった。
「まさくん行こうよー」
「ふられてるじゃん!かわいそー」
「はいはい。あゆくんは俺のだから」
「違います。もう僕行きます」
イライラするような事ばかり言われるため、僕はもう耐えきれなくなりこの場から早く逃げることにした。
カバンを持ち小走りで休憩スペースを抜けてそのまま大学の裏の喫茶店へ向かう道へと出た。
「ん?あゆくんが座ってたところに落し物あるじゃん。全くあゆくんはうっかりさんだなぁ。これは薬……抑制剤…?」
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