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26本目、ゲーセン。
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ゲームセンターに着くと、大音量で色んな音楽が響きあっていた。制服を着たの人たちが沢山いてとても賑やかだ。
見慣れぬものが沢山あり、ついキョロキョロしてしまう。きっととても挙動不審に見えているだろう。
ぬいぐるみがつまれているクレーンゲームや、銃を使うゲーム。それにメダルゲームも沢山ある。
「あ、あれ可愛い!」
長野さんはスタスタとクレーンゲームの方に向かっていった。僕はその後を追いかける。
「ゆるキャラ…?」
「そう。今このキャラ好きなんだよね」
そのキャラクターはパッと見が犬なのか猫なのか分かりにくい。
目がギョロっとしていて歯をむき出しにしている。その歯はギザギザしていて獰猛(どうもう)そうだ。けれどぬいぐるみなだけありとても可愛く見えてくる。
長野さんはそのぬいぐるみを目を輝かせながら見ている。
クレーンゲームなんてあまりやったことがなく、とりましょうか?なんて無責任には言えなかった。
「えっと…か、可愛いですね」
「可愛いよね!いいなぁ」
どうしよう。どうやって取ればいいのか分からない。そもそもクレーンゲームって自力で取れるものなのだろうか。沢木は失敗する度に「確率機だ!」と騒ぎ散らしていた。
「あれ、紅野くんだ」
「えっ…?」
モヤモヤと考えていたら、背後から声をかけられた。びっくりして即座に振り向くとそこには笹窪さんがいた。
まさかこんなところで会うとは思っておらず、目を見開いたまま暫(しばら)く言葉が出なかった。
「さ、笹窪さん…なんでゲーセンに一人でいるんですか?」
やっと出た言葉が少し失礼な内容になってしまったのでは無いかと後から後悔した。
一人で来ている人なんて他にも沢山いるのだから。
「このゲーセンの中を通って行った方がが近道だから。ゲーセン自体に用はないよ」
笹窪さんはイヤホンを外して目線を僕から長野さんに向けた。
そして眉間に皺を寄せて少し言いづらそうに言葉を紡いだ。
「……オメガ性ですか?」
長野さんは目を見開いて驚いた。
そして顔を引き攣(つら)らせて小声で
「わかるんだ……アルファ性ってこと?」
そう答える。長野さんは少し怯えているように見えた。明らかに表情が曇っている。
「あっ…えっと、あの…笹窪さんは僕のバイト先の…」
「…あぁ!そうなんだね。彼が歩生くんが話していた人かぁ」
長野さんはホッとしたような表情を見せたあと、まるで品定めするかのように笹窪さんを頭の先からつま先まで眺めだした。
「初めまして。笹窪暖です。紅野くんの大学の友だちですか?」
「ううん。友だちだけど大学先のではないよ」
「そうなんですね」
笹窪さんはずっと見られていることに少し困惑していた。
僕が話していた人だから気になるのだろうか?
それともアルファ性だから気になるのだろうか?
「僕今歩生くんとデートしてたんですよ」
「デート?」
「あっ…えぇと…」
長野さんは明るい声色でそう言った。
友だち同士でもデートをしていると言いながら遊んでる人はいるため、そういうことだろうか?
突然デートなんて言われて少し戸惑ってしまう。
「ね!歩生くん」
長野さんはそう言うとまたゆるキャラのキーホルダーを見つめだした。
「それ欲しいんですか?」
「うん。僕このキャラクター好きなんだよね」
「ちょっと俺やってみますよ」
笹窪さんはそう言うと長野さんが見つめていたクレーンゲームにお金を入れた。
まさか本当に取れるのだろうか。少しドキドキしてくる。
笹窪さんをチラッと見ると、目が真剣そのものだった。すごい…クレーンゲームはこのくらい本気でやるものなんだ。今度沢木に伝えてみよう。
「わ!引っかかった!」
長野さんはタグがアームに引っかかると、すごく嬉しそうにそう言った。そしてそのまま途中で落ちることなくキーホルダーを二個ゲットした。
「すごい…!笹窪くんすごいね!歩生くん、すごかったね!」
「は、はい…すごい…」
「喜んでもらえたなら何よりですよ」
「ありがとう!」
笹窪さんはニコッと微笑むとそのまま歩いていってしまった。
長野さんは片手で大切そうにそのキーホルダーを持ち、もう片手で笹窪さんの背に向かい手を振っていた。
「歩生くん…彼、とてもいい人だったね…」
目を輝かせキーホルダーを見つめながらそう言った。
余程欲しかったのだろう。笹窪さんが来てくれたお陰で長野さんがすごく楽しそうだった。
笹窪さんが「オメガ性?」と聞いた時はどうなることかと思ったけれど…。
長野さんは番相手がいるから、他のアルファ性はフェロモンを感じ取れても理性が揺れることは無いのだろう。
それに笹窪さんは抑制剤を欠かせぬようにしていた。
…それとも、笹窪さんが感じ取ったフェロモンは本当に長野さんのものだったのだろうか?
僕のことをベータ性だと信じて疑わない様子だったことから長野さんだと思ったのではないか?
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