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85本目、耳打ち。
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「ゆっくりできましたか?」
「お陰様で」
「ありがとうございました」
食後は帰り支度をしてすぐに部屋を出た。
その際に大和さんとバッタリ会い、そう聞いてくれた。
「ちょっと歩生さん」
大和さんは僕の耳元に近づく。
「暖くんのことよろしくね。歩生さんといる時は素だと思うんだ。きっと今はとても幸せなんじゃないかな」
そう言われて目の前の暖さんと目があいドキドキしてしまう。
僕こそ暖さんと大和さんにこれからもよろしくお願いしますと頭を下げたい。
「…大和さんありがとうございます。僕も同じなんです。また来ます」
大和さんはニッコリと笑うとそのまま廊下を忙しなく歩いていく。
「…何話してたの?」
「えっと…秘密です」
暖さんは曇った表情のまま僕をじっと見つめてくる。
「こんな短期間で大和さんとそんなにも親しくなったの?」
暖さんは少しムッとしたような声色でそう聞いてくる。もしかして嫉妬なのだろうか。
少しだけ僕の心がそれを喜んでいる。
「…秘密です」
「えー…そういう風に言われると余計に気になるんだけど?」
暖さんは納得のいかない表情のままだけれど、多分本気で拗ねてはいないのだろう。
相手が大和さんということもあり、本当に教えられぬような秘密ではないとわかってくれたのだろうか。
「…ま、いいけどね。大和さんに何とか聞けないかなあ」
「そこまでするんですか?」
「冗談だよ。ほら、行こうか」
暖さんは僕の手をギュッと握り歩き始めた。
遅れないように歩幅を合わせて隣を歩く。
外に出ると、眩しい太陽の光が僕たちに降り注ぐ。
午前中でも関係なく人が沢山いて賑わっている。
数駅隣にこんな素敵な場所があったことを知れたのが改めて嬉しい。
またここに来て色んなお店を巡って、大和さんのところに泊まって温泉を楽しんで、美味しいご飯を食べてゆっくりとしたい。
もちろん暖さんと一緒に。
「どうしたの?なんか楽しそう」
「えっ…?」
「すごいニコニコしてる」
「…楽しかったからです」
顔に出ていたのが少し恥ずかしいけれど、そのくらい楽しかったのだ。
暖さんも僕の言葉を聞くと嬉しそうに笑ってくれた。
こんなに穏やかな日々を過ごせるなんて、この幸せが永遠に続いたらいいのに。
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