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90本目、ドンドン。
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「あー…濡れちゃった……」
お風呂掃除を終えてみると服がびしょ濡れになっていた。僕はお風呂掃除が下手なのだろうか。というよりかは多分、ぼーっとしながら掃除をしていたから濡れてしまったのだろう。
浴室から出て着替えようと思った矢先、突如大きな音が玄関から聞こえてきた。
ドンドンドンドンドン
と、誰かが僕の家のドアを外から強く叩いている音だ。怖くなり声も出ずひたすらその場に立ち尽くしていた。
もしかして掃除の音がうるさくてご近所さんからの苦情だったりするのだろうか。
だとしたら相当怒っているみたいだ。
「どうしよう……居留守……」
とりあえず外の人が誰かを確かめるためドアに恐る恐る近づいていく。その時間は多分数秒なのだろうけれど、僕にはもっと長く感じた。
その間も何度もドンドンと大きな音でドアを叩かれていた。その度に心臓がキュッとなり肩が跳ねる。
(怖い…でも確認しなくちゃ…どうしよう…)
ようやく扉の前にき、覗き穴を見てみる。
そして僕はすぐにドアを開けた。
「暖さん…!どうしたんですか…!」
「よかった、いた……よかった……」
そこには暖さんが立っていた。
息切れをしていて相当焦っている様子だ。
まさか暖さんはここまで走ってきたのだろうか?
暖さんは僕と目が合うとすぐに顔を逸らした。
「……暖さん?」
「歩生、服濡れててその……す…けてる」
少し顔を赤らめているのはそれのせいなのか、走ってきたせいなのかはわからない。
「…すいません、お風呂掃除をしていたので」
「そっか、そういうことか。ごめんね突然。目が覚めた時に歩生がいなくなってて、俺に嫌気がさしたのかなって不安になって……」
軽くついた寝癖を直すこともせず起きてからそのまま来たのだろうか。
僕が不安にさせてしまったから…?
暖さんは語尾が少しづつ小さくなりながら俯いた。
「えっと…」
そして次は顔をバッとあげて、驚いたような顔をして僕を見てきた。
「え……涙目、どうしたの?」
「……暖さんがドアをドンドンするから怖かったんです」
その恐怖と相手が暖さんだった安心感と、好きな人が目の前にいる愛しさから気づいたら涙が零れそうになっていたみたいだ。
暖さんはニコッと笑うと僕の頭を優しく撫でる。
ほんの少し会えなかっただけでお互いひどく不安になっていて、会えたらお互いホッとして。
同じことを考えてるんだ、感じているんだと思うと嬉しくてたまらなかった。
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