アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
カフェにて
-
「ダルいめんどい行きたくない」
「いいから来い」
と、駆り出されて15分程。休日を兄弟に返上。さっきのセリフ兄貴じゃないからね?俺兄貴いないから。じゃあ誰かって姉貴しかいねぇよ………。
「これどう?セットアップもう一着くらい欲しいの」
「あー、いいんじゃない?」
「あ!これこれ、このクラッチバッグ、サイドまで開くのが良くない?」
「同じの家にあるくね?」
「ぜーんぜんちがーう!!」
へーへー、と店の入り口の傍に置かれた椅子に座りながらスマホを何の気なしに弄る。その間にも鏡の前で服をヒラリヒラリと翻すのは俺、高岡すばるの姉の高岡美星である。顔こそ弟の俺でも認めるくらい整っているが、やる事なす事は時として横暴極まりない。
隔週レベルで買い物に駆り出され、服やら靴やら雑貨やらをどうのこうの聞かれても。別に俺も服とか好きだし買い物も好きだ。でもこうも毎回の様に連れ出されては…。女子の買い物って本当疲れるよなぁ。
そんな時思い出すのは赤髪の友達で。きっとあいつなら女子を喜ばせる技を沢山知ってんだろうなー、って。
ってまー、別に俺旭じゃないし。
「姉貴早く彼氏作って彼氏と来いよ」
「今は恋愛はお休み中なんですぅ〜」
俺の顔を見もしないで服を体に合わせている。
「あっそ」
「これ買ってくるねー!」
ウキウキしながらレジに向かうその姿を見てため息が出つつもしょうがねぇな、なんて思ったり。
何軒かの店を出たら俺の手には2、3個のショップ袋が。きっとこれが俺が駆り出される理由の一つでもあると思う。
「なーんか、お腹すいたね」
「んー?別に」
「今日はちょっと食べてこうよ!七海さんいるかなー…」
「……?」
心なしかウキウキとした姉貴の様子を横目で見遣る。
いつもなら俺は車の中で待ってる、がデフォルト。買い物の帰りに毎回寄るカフェがあるのだが、そこのケーキが姉貴は大好きで。1人で出掛けて行った時も、可愛らしい箱を抱えて家に帰ってくる。有名なパティシエが作ってるらしく、車の中から見ても店が賑わっているのがいつも分かる。
で、今日は何故か俺も車から降ろされた。
「持って帰るまで我慢できない!奢るから一緒においで」
奢ってもらえるなら拒否する理由も見つからないわけで。姉貴は駐車スペースに車を停め、俺はすんなりシートベルトを外して助手席から降りた。
店内に入り姉貴はすぐ様ある人物に声をかけた。
「七海さん、こんにちは」
「あっ、高岡さん!こんにちは〜」
姉貴が声をかけたのはこの店の店員だろうか。
ゆるりとした口調のその男は色白で襟足が長めの綺麗な黒髪。目元は睫毛が長く、唇も薄く鼻筋も通っていてなんかもう一言で言えば美人、てそんな感じだ。
「いつものでよろしいでしょうか?……恋人さんですか~?」
「ふふ、やだ、弟ですよ。
今日は買い物帰りに一緒に連れてきたんです」
誰が恋人だって?勘弁してくれ、こんな女が彼女とか、俺の手には負えない。つーかさぁ、姉貴のこの猫の被りよう何なの?いつもの俺への態度の真反対をいっている。
「あ、そうなんですかなんかすいません~。
ええっと、弟さんはご注文はお決まりですか?」
「あー、っと……じゃあ同じやつで」
「かしこまりました~」
ニコッと笑って注文された物を用意しに少しカウンターを離れる男。
その間に姉貴がコソッと耳打ちをしてくる。
「かっこいいでしょ?接客もすっごいスマートだし。ここのお店ケーキも美味しいけど店員さんもみんないい人ばっかり!」
「ふーん」
クルッと周りを見渡せば、あー、まあ成る程ね、って感じで。目鼻立ち整ってるお兄さん達が多かった。
「やっぱりいいですね、このお店。
ショーケース見させてもらってもいいですか?」
「はい、是非。
いつもありがとうございます~」
これまたウキウキしながらショーケースがあるレジの方へ歩いて行く姉貴。こうして見ると本当子供みてぇ。そのレジを見ると、そこには長身のもうなんかダントツでかっこいいと言えるような店員がいて、その人がニコニコと話しているのは金髪の少年だった。
男の客も意外に来るんだな。
そんな事を思いながらクルリとカウンターに向き合った。そこで俺が見たのは、苦しそうに、切なそうに、でも愛おしそうに…そんな複雑な表情でレジを見ているお兄さんだった。
レジのお兄さんが金髪の少年の頭に手を添えた時にもそんな顔して見ているもんだから、あー、はいはい。と。
さっきまであんなにニコニコしてたのにねぇ。
こんなに綺麗な顔して凄い複雑な顔するからさ、変な話見とれてしまった。
「ねぇ」
「え……あっ、はい、何か追加されます~?」
ハッとしてお兄さんが俺に反応する。
「お兄さん、何かありました?」
「……え~、何がですか~?」
少しの間を置いてまたニコリと。
お兄さん。顔引き攣ってんのバレバレ。
「まあいいや、長くなりそうなんでコーヒーおかわりもらえます?」
一向に戻ってくる気配の無い姉貴を見てお兄さんにコーヒーのおかわりを注文した。かしこまりました〜、なんてゆるゆるな返事をしてるクセに一瞬顔が曇るのを俺は見逃さなかった。
しばらくして二杯目のコーヒーを飲み終わる頃に姉貴は戻ってきた。
「ふふ、4つも買っちゃったの」
「本当好きだな」
じゃ、帰ろうか!と言う姉貴に着いて行き店を出た。
そっとケーキの皿の下に忍ばせた物をちゃんと確認して。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 6