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余裕
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ぎゃんぎゃん騒ぐ旭達を撒いて、お兄さんの腕を掴んだまま半ば無理やり街のカフェに連れてきてしまった。
「おに……えーっと、七海さん?だっけ?」
「…そうだけど〜」
「姉貴に聞いたんすよ、変に怪しまないでくださいね」
そう言ってパッと腕を離して店内に入る。
それはそうと気になってた事があって。それとなーく、そんな話になるよう恋愛方面に話を持っていった。
「へー、七海さんって彼女いないんですね」
「……まあ、今はね~、仕事に生きたいっていうか~」
「へえ……」
聞けば今七海さんはフリー、だそうだ。こんなに綺麗だと…女がほっとかねぇと思うんだけど…。
なんか気になんだよなぁ。あの時の七海さんのカフェのお兄さんを見る目とか。絶対的確信が欲しくて、軽くカマかけてみようかな、なんて。
「最近失恋とかしました?」
「え……えぇ?なんで〜?」
「や、なんとなーく。彼女の話振った時寂しそうな顔したんで」
チラッと七海さんの顔を伺いつつ、
「で、まあ、こっから俺の推測になるんですけど、…相手ってあの茶髪の人だったり……とか」
「っ…!」
言うが早いか置いてあるカップに添えていた手が震え、かちゃんと音がなる。
あー、うんうん。やっぱり?
一瞬で顔が赤くなって、目が泳いでる。
これで確証は得た訳なんだけど、七海さんが赤くなったり目泳がせたり、恋愛の話をして寂しそうな顔になるのが何故かイラッとした。
「あの人見てる時、すっごい寂しそうな顔してたから……気を付けた方がいいかもですよ」
「あっは……ご忠告ありがと~、
でも高岡くんには関係ないよね~」
「まあ……そうですね」
七海さんはあの茶髪のお兄さんが好きで?でも多分この間見た限りだとお兄さんはあの金髪の子が好きなんだろうし。七海さんは失恋した、と。流石にずけずけ聞きすぎたか、と反省もしたけど。だからサッと引いた。
基本隠し事とか嘘とか俺は好きじゃないから。周りの奴らの影響って言うか。旭とか北村って何でも俺に言ってくれて、あぁ、俺こいつらに頼られてんだな、頼ってくれてるんだなって思えて。
でも、七海さんは、「関係ないよね」って。
あー、そうだよな。昨日今日会った奴にそんな恋愛事情探られるなんていい気しないし。きっとこの人結構物事素直に言わないし隠したがるタイプだなって、話しててなんとなく思った。
でもその昨日今日会った人に頼られたいとか支えたいって思うのはおかしい事なんだろうか。
関係ないと言われてまたイラッとしてしまう自分が嫌だった。
他愛ない話をしてるうちにもいい時間になったのでそろそろ帰る事にした。そうしたらまさかの帰る方向一緒で、場所を聞けば俺の家も割と近かった。送りますよ、と言えばちょっと迷った顔をしてたけど、ありがとうと言ってくれて一緒に帰る事になった。
「今日はありがとうございました、
楽しかったです七海さんのこといろいろ知れて」
「いやいや~、こっちこそ~」
七海さんの住んでいるアパートに着いたがもう少しだけ話がしたくて時間をもらった。学生証ありがとうございました、とか今日は楽しかったですね、とかそんな何気ない会話をしていても七海さんの表情を伺う自分がいた。
ああ、もうちょっとで、あのイラッとする意味が分かるかもしれない。
そうだな、
「さっきの話ですけど、失恋の。
あれ、俺が忘れさせてあげましょうか?」
目があった七海さんにこう話を持ちかける。
「……忘れさせるって、君が代わりになるってこと?いやいや~、無理でしょ。僕高校生は守備範囲じゃないんだよね~、ごめんね~」
ヘラリと笑ってこう返される。
はは、すげぇ余裕かましてくんじゃん。
でもなぁ…本当に余裕なの?
スッと七海さんとの距離を縮めて顔の横に腕をつく。
「随分と余裕ですね」
「っ……」
急に目線を逸らした七海さんの顔をくいっと上げさせる。
本当に余裕な人ってこんな顔するか?
しねぇだろ。
ほんのり赤く戸惑う表情にゾクッとした。
「凄い余裕そうですけど……俺、ハマらせる自信ありますよ」
「~っ……、は、……っ、高校生なんかに、本気になるわけ、ないでしょ~……」
パッと俺から離れるとドアを開けて中に入ってしまった。
「あーあ」
ふぅ、とため息をついて七海さんの部屋の前を後にする。
アパートから出て、自分の家に帰りながら色々考えるけどさ。
多分俺、あの人に頼られたいんだなー。って言うより、
俺無しじゃ生きられないようにしたい。
あの俺を見たときの赤い顔を思い出してそう思った。
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