アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
File.2
-
『非通知、人形、先生』
*
さて、どうして彼女西彼杵希偲は大きな空を見上げてるのか。それは数十分前に遡る。
*
玄関の扉を開けるともちろん先ほどカメラで見た男が立っていた。特別背が高いわけでもなくがたいがいいわけでもない。少し細身の男は優しそうに笑ってる。けど、それと同時に希偲はふと思う。この人は何を考えているのだろうと。
まるで、彼は…
「初めまして、西彼杵希偲様。本日よりお側に仕えさせていただきます、SSの福山潤と申します」
優しい声。溶けるように体に染み込んでいく。全身を黒で包む彼とはまるで真反対の声。白いような、けど、少しグレーな声。温かくて、揺籃のような。
「西彼杵様?」
「.....申し訳ありませんがSSをお断りしています。お引き取り下さい」
希偲はばっさりと言うと扉を閉めようとする。が、福山は簡単そうはさせてくれない。扉が全て閉まらぬうちに声をかけられる。
「では、ご処分下さいませ。」
それは、まるで自分をゴミかのように発せられた言葉。綺麗に研ぎ澄まされたナイフの刄は電気を反射して光り輝いている。けど、そこで引き下がるようには出来ていない。今までの人生が希偲をこういう人間にしたのだろう。差し出されたナイフをサッと奪い彼の、福山の首元へと鋒を突き立てる。
「本当に処分してよろしいのですか?」
福山はこんな事態を予想してなかったのだろう。浮かべていた優しそうな笑みが崩れ言葉が失われた。希偲は福山と真逆に楽しそうに笑う。
「.....冗談です。お帰りください」
ナイフを福山に返すと今度こそ扉を閉めようとする。
だが、彼は最初とは違う真剣な表情で希偲を見る。
「西彼杵様、一日私に時間をくださりませんか?」
希偲は彼の目を見て逃げられないと確信しやむを得ず彼の言葉を受け取ってしまった。
*
彼はマンション内を案内するといい希偲を連れ歩いた。エレベーターに乗せられ屋上のボタンが押される。
「屋上から参りましょう」
福山はそう言うと先ほどのように優しそうな笑顔で言った。
清々しいほどの青空。芝生が広がる中に二箇所のテラス。一つはコンクリートの上にあり、しっかりとした屋根。白いテーブルに建物に装着されたベンチ。もう一つは蔓の屋根。一つ目とは違いコンクリートの壁はなく自由な感じだ。先ほどと同様に白いテーブル。そして、白い椅子が4人分。
小さな花壇には色とりどりの花花が咲き乱れる。
そして、中心には大きな木。
福山が言うには桜の木らしい。
希偲は流れるように通っていく風に髪をなびかせた。
「西彼杵様…」
「ぬぁぁぁああぁぁああぁ」
大声を上げて蔓の屋根から誰かが落ちてきた。
顔からドサッといってしまいかなり痛そうだ。
希偲は急いで駆け寄ろうとすると福山に止められる。
「杉田くん、大丈夫?」
「うぇ?!、福山さん!!お久しぶりです!」
杉田と呼ばれた男は福山がいることにかなり喜んでいるようだ。
今、顔面を地面にぶつけたというのにニコニコと笑ってる。
「杉田さん!アルティメットツンデレモンスターは捕まえられましたか?」
「お、梶田くん。捕まえたぞ!中村、大丈夫か?」
杉田の手の中から下ろされた生き物は10cmちょいの小人だった。
*
非通知がなり続ける。
人形のようなあなた。
育てた子は溢れてく。
『非通知、人形、先生』
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 60