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『街で出会った人外』
*
私たちの存在というのは必要であり不必要だ。
私たちは言うならば『異能力者』。
この世には普通の人間と先祖返りがいる。
それを先祖返りたちはα β Ωの三種に呼び分けている。
まず、普通の人間たち(全世界の総人口五割)のことをβ(ベータ)
そして、先祖返りの人口の九割 全世界の総人口の四割五分を占めているスタンダードタイプ『純妖』をα(アルファ)と。
そして、最後に先祖返りの人口一割 全世界の総人口の五分しかいない奇種『混妖』をΩ(オメガ)と呼んだ。
純妖は一つの妖怪だけを先祖とし、その先祖返りのことを呼ぶ総称であるが、混妖は先祖の妖怪がどこかで二種もしくは三種交わった 所謂[雑種]と言ったところだろう。
また、大きな家となると分家があり、分家の当主は基本的に混妖が選ばれる。
人ともまともな先祖返りとしてもみなされず差別を受けてきた混妖の者たち。
何よりも彼らは二種類の力を使役可能で前線に立たされていた。
死んでもすぐに再び産まれ幾度となく歴史は受け継がれる。
私たちの存在は先祖返り関係以外は知られていない。
だが、世に住みつく妖を滅するのは先祖返りたちだ。
そして、希偲は鬼族 分家当主 鬼姫である。
そう、彼女は鬼族界の唯一の混妖だ。
そのことは一部の人間しかしらない。
それは鬼族宗家当主、そして、許婚の人間。
彼女らの実態を知ったものは呪われ死ぬと言われ誰も知ることを望まなかった。
*
「西彼杵様…」
「その名前で呼ばないで!
あなたも鬼族なら知ってるでしょう?
彼岸花の西彼杵家。私は呪われた忌み子。
宗家当主の娘を分家に陥れた呪われた子だと!」
苦しい、苦しい、苦しい。
いつまでもがき続けなきゃいけないの?
人がいなければ傷つけることも、傷つくこともないのに。
どうして、あなたはそんなにも…
「では、希偲様…とお呼びしてもよろしいですか?」
福山はにっこりと笑い希偲にそう言った。
希偲はひゅっと息を詰め涙を零した。
どうして、あなたはそんなにも優しくするのかと。
浅い呼吸に脳が働かない。
「福山さん!大丈夫ですか?」
「杉田くんこそ大丈夫?」
「はい、ピンピンしてます。さっき凄かったですね!!かっこよかったですよ、希偲ちゃん」
「え」
呼ばれたことのない呼ばれ方。
福山はぴしっと固まっている。
前髪で表情が見えない。
希偲も戸惑いが隠せずおろおろする。
「あ、ダメ…ですか?」
「杉田くん…」
「ひっ…?!ふ、福山さん?今までにないくらい怖い顔して…」
福山から逃げる杉田。
希偲は俯く。
今まで、そんな呼び方で名前を呼んでくれる人はいなかった。
二つ目の能力を開花させてから学校にも行けず友達だった人たちは一人残らず自分の元から去ってしまった。
「希偲ちゃん…」
「…希偲様?」
「それ…で、いいです。」
「え?」
杉田と福山はぽかんとしてこちらを見てる。
恥ずかしさと嬉しさでどういう顔をしてるかわからない。
「それでいいです、希偲ちゃんで」
「…希偲ちゃん」
*
『クチナシのいい香りがするわね、希偲』
『…はい、お母様』
『ありがとう、私は………………』
『…っ…、うっ、う、うわぁあああああああああああ』
それは、初めての別れ。そして、最後の本当の名。
私は人外。
こっそりとこの世に住みつく。
私は街で出会った人外のちっぽけな破片。
【クチナシの花言葉】
・とてもうれしい
・幸福
・喜びを運ぶ
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