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File.6
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『唯一の間違いは私一人が生きていること』
*
呼吸が荒くなる。
息がうまく吸えない。
グルグルと視界が回って狭まる。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
「希偲様!大丈夫ですか?!」
少し遠くから聞こえる福山の声
きっと、女子トイレだから入ってきてないから。
心配そうなのがよくわかる。
別に心配なんてしなくてもいい。
私なんて、私なんて、私なんて…
すると、突然お手洗いの扉に短くリズミカルなノックがされた。
「雪だるま作ろ〜」
鍵が開く音がして扉が開く。
白と黒のメイド服。
まるで白黒の映像を見てるように錯覚する。
紫な黒髪が首あたりでお団子のように結われている。
「大丈夫ですか?西彼杵お嬢様」
「え…」
にっこりと笑った女性は希偲に手を差しのべる。
いつのまにか、気持ちの悪さは消え去っていて目の前は鮮明に見えた。
「ちょっと、山田。お嬢様ビビってんじゃんか」
「あ、喜多村さん」
「すみません、お嬢様。お水お持ちいたしました」
喜多村と呼ばれた女性は希偲を立ち上がらせ水を渡した。
希偲は水を少し含むと飲み下す。
「希偲ちゃん!!大丈夫?!」
飛んできた女性は白い着物を来ていてすごく心配そうな顔で希偲を見る。
「神谷さん。ここ女子トイレですよ?」
「山田黙れ。今は女だ」
「あ、はい」
「…神谷?」
*
「えっと…」
いつのまにか、集まった曉館の住人達。
そして、1人性別が変わった神谷。
希偲は突然のことと人の多さに再び眩暈がしそうだった。
「神谷さんは、雪族の当主なんだけど。当主は性別に決まりがなくて男にも女にも…雪夜叉にも雪女にもなれるんだ」
優しくゆっくり説明してくれた杉田。
男に戻った神谷が希偲の方へと近づく。
「ごめんね、びっくりさせちゃって。一応産まれた時は男だったから基本的に男なんだ。
間違っても女になって酷いこととかしないからね!!」
本気で焦っている神谷にくすりと笑う希偲。
「大丈夫ですよ。そんなに困った顔しないでください」
「希偲ちゃん…」
神谷はにっこりと笑うと手を差し出し希偲に握手を求めた。
*
「ではでは、私達裏方の自己紹介させてもらいますね!
まず、曉館の女神!や…」
「山田うるさい」
山田を止めるのは喜多村だ。
山田の頭を抑え下を向かせつつ自己紹介を始めた。
煙草を吸いながら。
彼女はメイド服ではなく黒い女性用スーツだ。
「喜多村英梨 (キタムラ エリ)だ。通称キタエリ。曉館の室長だ。」
「室長っていうのは裏方…メイドや料理長のまとめ役です」
詳しく説明してくれる福山。
ここはどうしてこんなに
温かいのだろうか。
優しいのだろうか。
今までいた場所があまりにも冷たすぎて
人の体温があまりにも温かすぎて
自分だけが異物だと感じてしまう。
「メイドの山田です!本名は広末涼と申します!」
あぁ、優しい。優しい。
怖い。怖い。
辛い。辛い。
「希偲様?!」
*
『ねぇ、希偲』
『何でしょうか、お母様』
『いつかあなたが愛することを知ったら…』
『そんなことありません。故に心配することもありません』
*
「どうして泣いてらっしゃるのですか…」
「え…」
*
【いつだって終わるための答えを捜してる】
『この命が終わるための…』
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