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File.14
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世界中が知っている、君だけが知らないこと。
side ??
*
「百鬼夜行?」
少し暗めの部屋で男は呟いた。
掘りごたつ風になった部屋に男が4人、2人ずつ向かい合い座っている。
3人は足を伸ばし掘りごたつで足をぶらつかせるがもう1人は斜め後ろにて胡座かいている。
「ええ。黒幕も大体分かってきています。ですが、決定的な証拠がない今全国の先祖返りが危険です」
少し細身の男は深刻そうに。だが、落ち着いた声音で話す。
溶けた氷がロックグラスの中で崩れ、音を立てた。
「そして、曉館にスパイがいると仮定した」
眉がぴくりと動く。
怖いくらいの静かな空気にピリピリと痛みすら感じる。
だが、落ち着いた声音は変わらない。
まるでその話はどこか遠くの国の話のように。そう他人事のように。
「曉館‥‥だと?」
「ええ、曉館はあなた方も大事な場所のはずです」
暗闇の中一瞬目が赤く光る。
だが、それは一瞬過ぎて誰も気づかない。
「何が言いたい」
「協力していただきたいのです」
出された言葉が訝しげに反芻される。
2人は顔を見合わせた。そして、何の言葉も交わさず頷いた。
「協力とはどういうことだ」
「次の百鬼夜行でこちらの全戦力を相手にぶつたい」
男はやや前屈みになり少し低めのロートーンで言葉を紡いでいく。
話される側は息を飲んだ。
「今の先祖返りの在り方を変えたいんです」
淡々と話された言葉を少しずつ理解していく。
話は現実にするにはとても難しい。
だけど、それは話している本人もよく分かっているのだろう。
「なぁ、鈴村」
ふいに話を中断させ黒縁のメガネをかけた少し髪の長い男が一生懸命話す男の名前を呼んだ。
鈴村と呼ばれた男は返答はせずただ名前を呼んだ相手を見る。
「それは誰のためだ」
「森川さん、それは‥‥‥‥【愚問】やないですか?」
鈴村はにっこりと笑って初めて関西弁で言葉をこぼした。
また氷が溶けてロックグラスの中で音をたてた。
「そうだったな」
森川は鼻で笑うとだいぶ氷の溶けたロックグラスの中身を口に含む。
グラスを置くと不敵な笑みを浮かべた。
「いいだろう。協力しよ‥‥」
「叔父貴!」
森川の言葉を遮り若い男が叫ぶように入ってきた。
真っ青な顔で呼吸が荒い。
「静かにしねえか‥‥、何なんだ」
「坊っちゃんが‥‥、聡坊っちゃんと慎之介坊っちゃんがやられました」
グラスが倒れた。
流れ出す液体と氷がテーブルを泳いで落ちた。
これが始まりだという合図のように。
*
【君がウサギを追いかけないと物語は永遠に終わらないんだよ、アリス。】
それは呪われた歯車
何度も導かれた運命(うんめい)にまた変えられなかったと嘆く運命(さだめ)だと
また僕らは仲間を殺さなきゃいけない
*
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