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File.21
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真夜中にチョコレート
*
「え‥‥?」
鈴村と櫻井が曉館を出てちょうど半年。
久々に海外から戻るとのことでこっちにも来るとのことだった。
だけど、それは現実にはならなかった。
「は?え?どういうこと?」
「鈴村様と櫻井さんが乗っていたフェリーが沈没しました。まだ、死亡確認は出来てません」
突然の知らせだった。
けど、なんとなく二人が死んでないと直感的に分かった。
神谷たち三人は何故かわからないがお互いの死が分かる。
長年共にいすぎたせいだろうか。
「まだ、あの二人は死んでない。そう折り返し伝えて」
きっと、自分に連絡が来るのが早かったのもそれを確認するためだろう。
何も感じなかった。別に痛みが繋がっている訳では無い。
ただ、どちらかが『死んだ』ということ。それだけがなんとなく分かるのだ。
「‥‥そうやって毎回心配させる」
そうやっていつも二人は自分のことを置いていってしまうのだ。
いつだって、二人の横には並べない。
「神谷さん、そんなに思いつめた顔しないでください。今にも倒れそうですよ?」
「‥‥小野くんって幼なじみとかいるの?」
言われたこととは180度違う話題に小野は目をきょとんとさせて驚いたようにした。
だけど、すぐに優しそうに微笑んで話を始めた。
「五人います。‥‥けど」
「けど?」
話し始めた小野くんに席に座るように促した。
首を振ったが話を聞いてる間上を見続けると首が痛くなると言い座らせた。
「だいぶ前にバラバラになっちゃってもう随分とみんなで遊んだり話したりしてないです」
悲しそうに笑う彼に全てを吐き出して欲しくて質問を続けた。
五人がどんな人間で何が好きで、どうしてバラバラになったのか
「みんな仲間思いなやつらでしたよ、みんな。生まれてから死ぬまでずっと仲が良くて‥‥」
「どうして過去形なの?」
「ある事件でみんなバラバラになっちゃったんです」
小野はそう言ってゆっくり瞬きをして過去を語り始めた。
血なまぐさい最悪の過去を。
*
文久二年 夏
俺たちは再び生まれた
幾度となく記憶を受け継いでいた俺たち
後世へと文字を遺し、そして自ら名付けた
異能の力を持ち、前世以前のものの記憶を受け継ぎ
後世を見据えるものたち
【先祖返り】
これは先祖返りの始まりのお話
『誰も居なくなって初めて気付く。あの場所は確かに暖かかったのだと。』
*
甘くないそれはまるで自分自身のようだった。
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