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File.22
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『やぁ、元気だったかい?』
*
「希偲お嬢様、皆さまおいでになりましたよ」
「ええ、今行くわ」
六人が再会して5度目になった。
世界は毎回変わったが、身分は大差なかった。
「失礼します、遅くなり申し訳ございません」
「今さらしおらしいとか気持ち悪い」
「私だってしたくないし」
立花は茶を啜りながら希偲に冷たい目線をやる。
希偲は言葉遣いを崩すと立花を足蹴にした。
【立花 慎之介】
薬剤師の家計の長男 跡継ぎとして生まれる。
ちなみに、前回は医者だった。
日野の家に専属の薬剤師として仕えている。
「こらこら、二人とも。せっかくの時間なのに喧嘩しないの」
「「こいつが悪い!」」
二人に微笑みながらいなすは近藤だ。
だが、二人とも負けじと睨み合う。
【近藤 孝行】
現在 将軍 徳川家茂の次男。
現在の次期将軍最有力候補だ。きっとこの中で一番の権力者だろう。本名は徳川慶喜だが幼名で下町をねり歩く変わり者。
「こーら、二人とも座りなさい」
「痛い!日野くんひどいよ、僕にだけ‥‥」
「希偲は女の子だろう?慎ちゃん大人にならないと」
立花の額を可愛らしく叩いたのは日野。
立花がちらりと、希偲を見るとあっかんべーと、してやったりな顔をしていた。
【日野 聡】
武士の家系に生まれる。士分(身分)は侍。
徳川家に代々仕えている家系で侍の中で三本の指に入るほど。
立花を猫っ可愛がりしているのでそっちの疑惑がある。
「‥‥希偲、お前‥‥?!」
「ぎゃっ!」
「なっさけねえ声だな。いい加減大人しくしてろ、ぼけ」
希偲の頭にチョップをかましたのは福山だった。
希偲は振り向くと福山の襟首を思いっきり掴み、睨みつけた。
福山は何も気にしておらず、鼻で笑う。
【福山 潤】
孝明天皇の娘 富貴宮の付き人兼ボディガード
奴婢として生まれるが天皇に拾われる。
富貴宮のことにしか興味を持ってないので他の皇太子様方に嫌われてる。
「~~~っ、てめー‥‥、潤!」
「落ち着け、希偲!潤も女の子に何してんだよ!」
「喧嘩するな、危ない。また傷作る気か?」
二人の喧嘩の勃発を止めたのは小野だった。
希偲を後ろからホールドして、動きを止める。
だが、希偲はじたばたして福山になんとか攻撃しようとする。
【小野 大輔】
武士の家系の次男に生まれる。半ニートくん
性格がぱっと見穏やかだが、誰よりもえげつないため武士に向いてないとされる。(堂々とした戦いをあまりしない。知略的)
「仮にも仕えてる人間の頭をカチ割る気か!」
「大丈夫、その石頭なら割れない」
「~~~っんだと?!」
福山は日野の隣に座るとせんべいを手に取り頬張った。
だが、希偲は福山が食べかけのせんべいを取り上げ一口で食べてしまう。
【西彼杵 希偲】
孝明天皇の娘。正室の第二皇女様。
上記は幼名で本名は富貴宮。
福山が仕えているお姫様。立花と福山以外は好き。
「お前らうるさいぞ、静かにしろ」
「桂宮 節仁親王様!」
皆が頭を下げる中希偲だけは立ったまませんべいを頬張る。
特に睨み合うでもないが、お互いを冷たい目で見た。
桂宮 節仁親王様
幼名 【小野坂 昌也】 孝明天皇の弟君で第六皇子。
希偲と同じ鬼族の先祖返り。
「あー、徳川慶喜様頭をお上げください。他のものも見ております」
「はい、節仁親王。失礼いたします」
「昌也さんが何してるの、こんなとこで」
近藤が頭をあげ、立ち上がるとふいに希偲が質問をこぼした。
小野坂は全員を立たすと、希偲の方へと顔を向けた。
「次の天皇がどーちゃらこーちゃらで呼ばれたんだよ」
「?!」
次の天皇ということはまた世界が一変するということだ。
近藤の地位も危ないかもしれない。
「富貴宮様!孝明天皇様が英照皇太后様との間に養子を迎え入れられるそうで‥‥」
侍女の一人が大慌てで部屋にやってきては矢継ぎ早に話す。
希偲は侍女を落ち着かすと、笑って宥める。
「大丈夫だ。お前らが路頭に迷うことはさせない。他に知っているもの達を沈めてくれ」
「は、はい。かしこまりました」
「おーおー、イケメンですなぁ。姉上様は」
にっこりと笑い希偲に話しかける男を誰も知るものはいない。
だが、姉上様と言ったという事は養子で皇子に当たるものだろう。
「お初にお目にかかります。本日より睦仁として姉上様の弟となりました、幼名 細谷佳正と申します」
「‥‥潤」
「はい、なんでございましょうか。富貴宮様」
「そこの四名を無事に家まで送り届けろ」
希偲はそう言うと、細谷に座るように促した。
お互いがお互いの威圧で潰れそうだ。
「その者は元奴婢と聞きましたがそんなものを側近になさって大丈夫なのですか?」
福山以外の男全員が細谷を睨んだ。だが、本人は何も気にしてないようだった。
希偲は、細谷を見ると鼻で笑う。
「見る目がないな、睦仁親王。君と違って私たちは前世からの運命の元にここにいる」
「富貴宮様‥‥、私の事は‥‥」
「この者以上に私に忠誠を誓うものはどこを探してもいないだろう」
希偲はそう言うと、楽しそうに笑った。
細谷はため息を吐くと、変化した。
「皆さまのことは調べ尽くしています。先祖返りであるということも」
「‥‥何の先祖返りだ」
「何のだと思われますか?鬼族 鬼姫 西彼杵希偲様」
細谷は楽しそうに笑いながら突然変化を消す。
そして、希偲の背を向け歩き出そうとする。
「鬼族 雑種の疫鬼にございます。どうか、お見知りおきを」
「疫鬼‥‥?」
「病気など悪いものを蔓延させる鬼のことだ」
細谷は楽しそうにして去っていくと、小野坂が疫鬼について説明をする。
希偲は、変化すると何かを唱える。
「風音 蝶影 花炎に塗れ散れ 」
すると、小さな炎が空中で燃えて弾ける。
まるで、一瞬で空気が変わったように澄んでいった。
「潤‥‥と、宮野さんも四人を一緒に送って欲しいんですがよろしいですか?節仁親王様」
「今さらしおらしくしなくていい。どうせ、俺に話があるんだろ。悪いが宮野頼めるか」
「はい、昌也様」
福山と宮野を先頭に六人が行ってしまうと小野坂と希偲は希偲の私室へと足を向けた。
そして、その後彼らにとっても世界にとっても大きな事件になる。
1865年 慶応元年
事件まであと、三年半
*
オルゴールを抱いて眠る
その音色に何故だか涙が出た
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