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File.27
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『別れとは決意である』
*
完全な狼になった小野が神谷の上に乗っかっている。
ひょろい神谷には狼の小野をどかすことは出来ない。
月の光が反射して爪や牙が光っていて、その凶器たちはどんどん近づいていて。
あぁ、自分はここで死ぬのだろうか。
そんな考えが頭をよぎる。
でも、不思議と恐怖や悲しみはない。逆に嬉しいくらいだった。
「小野くん…、僕を殺してくれるのが君で良かったよ」
「?!」
目をつぶった神谷。
だが、牙は神谷に刺さることはなかった。
大きな金属音が森の中響く。
「やめろ」
小野を襲ったのは刃。
慌てて飛び退くと、神谷は誰かに起こされた。
「このバカが。何勝手にへばってんだ」
「‥‥昌也」
目を疑った。
そこにいるはずのない彼がいたから。
誰よりも会いたかったその男は6年前とは寸分の変わりもないように見えた。
「これは鬼族 宗家当主の小野坂昌也様ではないですか。なぜこんなところに‥‥」
少し焦っている小野。
睨んだ目に少し焦りが浮かぶ。
小野坂は神谷を自分の後ろに隠すとはっきりと少し低い声で返答をした。
「俺はこいつの初代SSだ。ちょっと一緒だったお前とは違う。こいつは俺のだ」
小野坂はそう言うと抜刀する。
小野も人型に戻り刀を抜いた。
同時に互いへと向かう2人。
刀が交わり痛いほどの金属音が響く。
「神谷さん!危ないのでこちらに…」
「潤…、小野坂が…」
福山は神谷の背中をさすると神谷を小野と小野坂の戦いから遠ざけた。
少し遠い場所に落ち着いたかと思った瞬間、福山が変化を遂げ振り下ろされた刀を薙刀で受け止める。
こちらでも響く金属音。
「羽多野」
「お久しぶりです。福山さん」
「死にたいのか」
「まさか。あぁ、まさかと言えばあなたがあの方の敵に回るだなんて…」
「だったら、何だ?」
「滑稽ですね。裏切り者」
交わる刀。あちらこちらで戦闘の音が響いてくる。
福山は神谷に逃げろと合図をした。
神谷は立ち上がり福山たちに背を向けて走り出そうとする。
「てらしー!」
「あいあいさー!」
「寺島?!」
木から飛び降りてきたやや小柄の男。
今、変化しても遅いだろう。どこにも逃げられない。
神谷はそう思っていた。
「神谷さん逃げて!!」
「余所見しないでくださいよ、福山さん」
福山と神谷に振り下ろされた刃。
二人共がもうダメだと思ったその瞬間…
福山と羽多野の刀が交わった金属音とともに神谷のところでも金属音が響いた。
「…神谷さん大丈夫ですか?」
「希偲ちゃん」
「希偲!あれだけ逃げろって…」
「逃げてたら宗家のご当主様に捕まったの。まあ、まさかクラスメイトと戦うことになるとは思わなかったけど」
「そのちゃん…、悪いけど死んでね」
「こちらこそごめんね、寺島くん。クラスメイトだからって手加減できないから」
「え」
希偲が振りかざした薙刀が寺島を切りつける。
血を吐きながら地面に突っ伏す寺島。
「てらしー…?」
寺島の元に行こうとする羽多野。
だが、福山の薙刀が通せんぼする。
怒り狂った羽多野の眼光が福山を睨みつけた。
「許さない」
羽多野の刃が福山を襲う。
だが、その刃は福山には届かなかった。
神谷の冷気が羽多野の腕を凍らしていく。
「それ無理やり動かそうとしたら腕取れるから。3.4時間もしたら溶けるよ」
「離せ!僕のてらしーに…」
悔しそうに涙する羽多野。
寺島のところへと駆け寄る。
「ごめんね、渉くん…。僕のこと置いていって…」
「そんなことしないよ。大丈夫だよ、すぐ終わるから」
羽多野が3人の方へと向き直り鋭く睨む。
だけど、神谷は困ったようにため息をつき福山はいつも通り考えが読めない笑顔。
希偲に至っては無表情だ。
「殺してやる…」
「風音 蝶影 火炎に塗れ散れ」
希偲が振りかざした薙刀は2人…を通り越しその後ろの大木を真っ二つにした。
青ざめる羽多野と神谷。寺島はあまりの衝撃に涙を浮かべている。
「クラスメイトを殺すようなことはしない。が、ここで道塞ぐなら手段は問わない」
凄む希偲に2人は怯えきっていた。
もう挑んでこないだろうと3人は逃げ場はないと判断し小野坂のところへと向かった。
*
「お前の…いや、お前らの目的は何だ?」
「目的…とは?」
刀を交えつつお互いに探りをいれる小野坂と小野。
二人共息を切らすがお互いから目を離すことはなかった。
*
小野「僕はあの人の代替品」
神谷「君はあの人の代替品」
『これは報復だ。あの日の。あるべき場所に還すための』
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