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File.28ボツ
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先ほど同様に先に書いてしまったものです。この時初めて小野の黒幕として近藤が動いていたというのが明らかになりました。本当はもう少し早く出す予定でしたが話の路線が変わってしまいボツりました。この時点では六人の幼なじみ設定はありませんでした。福山が二組と幼少期過ごしていた時期があるというだけでした。
『あのね、本当は一番嫌いだったの』
*
「お前の黒幕は…………か?」
「?!、何故それを…」
「やはりな」
小野坂は悲しそうな顔を一瞬したがまた小野を鋭い眼光が捉えていた。
小野は焦りが徐々に大きくなり隙が増えている。
2人が話を続けようとすると希偲と福山と神谷が戻ってきた。
「なっ?!神谷、お前ら逃げろっつっただろーが!」
「小野坂!…っ、負けんなよ」
泣きそうな顔。
(あれは嬉しい時の泣きそうな顔。俺はどれだけあいつを待たせたんだろうか…、なあ、神谷)
「うちのかわい子ちゃんに言われたなら頑張らなきゃな」
小野坂はそう言うと羽織を取り福山に投げる。
頼りになる背中。相手を萎縮させる殺気。
2人が刀を持ち直し飛びかかろうとした瞬間。
「大ちゃん、大丈夫?」
森の中から出てきた濃い紺色の着物を着た人間が小野を心配する。
誰もがその人物に驚愕した。
徐々に方々で戦っていた仲間達が集まってくる。
それでも静かだった。
「近ちゃん…」
「…っ、近藤孝行」
希偲は近藤を捉えるとありえないくらいの殺気を溢れさす。
びくりと怯える曉館の仲間達。
希偲は近藤の所へと走り思い切り切りつけた。
だが、その刃は彼へと届かず小野が受け止めた。
「小野さん、どいてもらえますか?」
「それは…、出来ない。」
「…寺島くんや羽多野くんを使役したのはあんただな」
希偲は俯きながら言葉を零していく。
近藤は何も言わない。
沈黙が漂う中小野は少し緩まった力に隙を突いて薙刀を振り払う。
突然のことに後ろによろけてしまう希偲。
受け止めたのは小野坂だった。
「希偲」
「今さら優しくしないで!あんたにとってもあいつにとっても私は憎むべき存在でしょ?」
「希偲、そんなこと…」
希偲は小野坂の手を振り払うと小野坂を睨みつけた。
叫ぶ様はまるで癇癪を起こした子供のよう。
子供の頃あれだけ大人しく、子供らしくなかった彼女が。
「私が母上を落とした忌み子だから…」
それ以上言葉も何も続かなかった。
希偲の目を塞ぎ口を塞ぎ耳を塞いだ。福山が。
風が通る音だけがする。
「希偲様、大丈夫ですよ。何も聞かなくても何も見なくてもいいです。曉館が、私が、あなたのすべてです」
「…っ、はっ」
「希偲ちゃん、大丈夫だよ。君は鬼族 分家当主 西彼杵 希偲じゃない。曉館 4th Floor Room3 住人 西彼杵 希偲だ」
福山の声が、神谷の声が、2人の言葉が希偲に届いてく。
透き通った、けれども宝石のように光る言葉が。
「神谷さ…っ、ごめんなさい…」
「大丈夫だよ」
ニッコリと笑う笑顔。
けど、次の瞬間神谷は雪夜叉へと変わる。
なかなか見ることの出来ない雪夜叉姿。
「あのね、本当は一番嫌いだったの。小野くん、君のことが」
(けどね、今は君のことが一番…)
神谷が手を振り下ろすと一瞬で雪景色になる。
そして、近藤と小野に氷の礫が飛ばされる。
小野は人型になり刀で全て切りつける。
「神谷さん…」
小野は神谷の方へと走ってくる。
振りかざされた刀。
けど、やはり彼の刃は神谷には届かない。
「無茶してんじゃねえよ。援護担当が」
「小野…、昌也。これは俺の戦いだ」
神谷は氷で剣を創り出し小野坂をどけ小野へと振り下ろす。
いとも容易く受け止められる刀。
だが、神谷は氷の礫を小野へと降り注ぐ。
「ぐは…っ」
「ごめんね、小野くん」
「大ちゃん!!」
近藤がそう叫ぶと森の中から何人かが出てきて神谷を襲う。
その隙に小野の手を引く近藤。
黒ずくめの奴らは一瞬でやられてしまう。
「神谷さん、すみませんが大ちゃんは返してもらいますね」
近藤がそう言うとふたりは森の中へと消えていった。
静かになる森の中。
ふいに神谷が座り込む。
「は…ははっ…、っ」
「神谷!」
「小野坂…、ごめん」
神谷はそう言うと小野坂に掴まり立ち上がった。
「兄さん!!」
「杉田くん。大丈夫?」
「大丈夫ですけど…、この人は…」
「僕の前のSS」
「小野坂昌也だ」
「えっ…、小野坂昌也って鬼族 宗家当主の?!」
杉田が神谷を支えながら小野坂と話をする。
それを何も言わず、何もせずただ見てる希偲。
すると、後ろから鈴木が話しかけてきた。
「希偲」
「たつ」
「大丈夫だよ。小野さんだって悪い人じゃないし神谷さんだってお前が思ってるより強い」
「うん、わかってる」
そう、わかってるのだ。
神谷や小野のことも、他の人間のことも。
そして、自分が弱い人間ということも。そして何よりあそこに自分の居場所はないことだって。
途中から入ってきた自分には何も無いことは。
希偲は目をつぶるとゆっくりと息を吐く。
吐かれた息は白くなりそっと消えていく。
「それでも、私はここで生きていかなきゃいけない」
「ここは充分お前の居場所だよ」
「うん。ここで…」
「希偲ちゃん!何してんの?早く帰ろ!」
神谷はそう言うと希偲を見てにっこりと笑う。
希偲はそっと微笑み、そしていつもの無表情に戻るとみんなの所へと駆け出した。
(お願い、ここで生きていたい。どうか、許して母さん)
*
『いつから、変わってしまったのだろう。』
『君は【代替品】のはずだったのに』
『あぁ、おかえりなさい、僕の【絶望】』
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