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第二章『EPILOGUE』
*
「今度こそ全員殺せ、魂ごと狩れ。二度と転生できぬように」
「仰せのままに」
菅沼が部屋を出ると、入口の横には間島が腕を組んで俯いていた。
名前を呼びかけると少し頭をもたげて視線だけこちらに向けた。
「まじぃ、待ってなくていいって言ったのに」
「別に。話の内容が気になっただけだよ」
間島はそう言って歩き出した。菅沼もそれを追いかける。
まっすぐとした姿勢が自分と彼がどれだけ違うかを示している。
「まじぃはやめてもいいんだよ?」
彼は‥‥、間島淳司はその昔彼らの仲間だった。
間島も西彼杵や近藤たちの幼なじみとして生きていた。
けど、それは間島しか覚えてないし間島自身もそれを打ち明ける気はない。
「俺自身がすがぽんといることを望んだんだよ」
間島はそう言って振り向き頼りなく笑った。
(あぁ、この憎しみと彼への愛しさはどこへ消えていくんだろうか)
*
「こんにちは、日野くん。相席いいかな?」
「あ、神谷さん!どうぞどうぞ!小野坂さんもお久しぶりです」
日野は嬉しそうに笑うと二人を席に促した。
立花も日野の隣に座ってたため小野坂も神谷の隣へと腰を下ろす。
本日の日替わりランチのプレートが神谷の前に置かれる。
「神谷さん、今日のデザート冷やしてるんでプレート返しに来る時に忘れないでもらってくださいね」
「あんげん、ありがとう」
「安元くん、ありがとう。神谷のことは俺がするからもう下がっていいよ」
小野坂が安元の腕を痛いほど掴んだ。
二人の間には激しい程に火花が散らされてる。
神谷はため息を吐きながら箸を運んでいく。
「鬼族当主様こそお屋敷にいるべきでは?」
「部下が優秀だからいいんだよ」
小野坂が立ち上がると取っ組み合いになる二人。
それを静止したのは新しくダイニングホールにやってきた希偲だった。
「おはようございます。安元さんすみません、父が」
「いいんだよ、希偲ちゃんは悪くないから。今ご飯出すね」
「はい、よろしくお願いします」
希偲は笑って安元を見送る。彼がキッチンの中に入った瞬間小野坂を睨みつけた。
娘にタジタジな小野坂にみな笑ってしまう。
「‥‥恥ずかしい、何してるの」
「だって、あいつが!」
「神谷さん、すみません。騒がしくして」
「大丈夫だよ、静かより全然いいから」
希偲はそう言うと、安元に貰ったランチプレートとワゴン、ティーセットを持って福山とともにダイニングホールを出ようとする。
が、そこで近藤と小野が入ってきた。
「どぅーん!おはようございマッスル!」
「D、おはよ。元気だね」
福山がそう言うと小野と福山は楽しそうに話を始めた。
やれやれと二人を見る希偲と近藤に周りは
(‥‥なんか、保護者というか。所帯染みてるといか)
「近ちゃんたちのランチも貰ったから四人で屋上のテラスで食べようか」
「そうだね。ほら、大ちゃん行くよー」
「おなかペコペコだ?」
「希偲、ワゴン俺がするよ」
楽しそうに四人はエレベーターの方に向かっていった。
昨日のお昼に新しい入居者として三組六名の先祖返りたちがやってきた。
誰も知らされず突然再び現れた彼らは数名の性格が変わってるせいか別の人間に見えた。
「で、立花くん。君たち六人は誰がどこまで記憶があるの?」
神谷がそれを聞くと次にダイニングホールに入ってきた中村、鈴木と島﨑、安元がやってきた。
メンバーはほとんど変わらない。けど、状況はまったく違う。
「記憶があるのは僕、近藤、福山。小野は僕ら幼なじみという概念は覚えてますが物事に対しての記憶は無くて、日野くんは半分位思い出してきてるんだよね」
「うん、あんまり詳しくは思い出せてないんだけどね」
立花の説明に首を傾げる神谷。それは皆も同じだった。
肝心な一人の説明を渋っているように見えたからだ。
立花はその空気を察知したのか軽くため息を吐き話をする。
「希偲は現在分からないです。僕らのことをただの幼なじみと思ってるのか、それとも隠してるのか」
その言葉に驚愕した。神谷は小野坂の方を見たが、首を振るだけだった。
立花は周りの表情を見ずに話を続けた。
「多分福山と近藤は知ってると思いますけど」
話を聞くに耐えなかった。自責の念と哀しみとその他諸々がひっついたような言葉に。
きっと、また自分たちは力になれないと思っているのだろうか。
「話してくれてありがとう。あとは本人から聞くよ」
神谷はそう言って笑い、またランチに箸をつけた。
*
「ねえ、潤。別に私と一緒にいなくていいんだよ。せっかく久々に大事な人が‥‥」
「お前ら以上に大切な人なんているかよ」
福山はサラダをつつきながら話す。希偲は穏やかな顔をしながらため息を吐く。そして、近藤と小野の方へと向いた。
二人はお互いの嫌いなものを押し付けあって戦っているためまだランチに手をつけていない。
「こら、ちゃんと好き嫌いせずに食べなさい」
「希偲お母さんこわーい」
小野がふざけて言うと、無理矢理デザートに付いていたレーズンを口に入れられる。
小野は不衛生だからか口から出すのが嫌からか必死に口を動かしてなんとか飲み込んだ。
「死ぬかと思った‥‥」
「潤、これ小麦ベースだから私もらうね。このねぎのヤツ食べていいよ」
希偲がそう言うと小野が頬を膨らまし怒りだす。近藤は楽しそうに防寒者を決め込んだようだ。
「なんだよ、自分だって嫌いなの渡してるじゃん!」
「潤はアレルギーなの。それ食べれなくて食べる分減ったら可哀想でしょ。あと、ねぎのは潤が好きだから‥‥」
「言い訳!」
小野は頬を膨らましたままそっぽ向く。
希偲はため息を吐くと小野の皿にデザートのアーモンドを渡した。
「Dはアーモンドが好きでしょ」
「‥‥ありがと」
小野はアーモンドをつまみ始める。すると、ふいに福山が消えた。驚く小野が福山を探し始める。
「あれ?!潤がいない、どこ?!」
「大ちゃん落ち着いて。お手洗いだよ」
小野は理解するとまたアーモンドをつまみ始めた。
*
「これは拉致っていうんですよ」
「幼なじみより大切な人いないんだもんね、潤は」
「‥‥聞いてたんですか、趣味悪い」
続けようとした言葉は唇で塞がれた。抵抗はしない。する意味もない。
「俺はお前より大事な人はいないよ」
*
旧校舎の恋人。(人間であるとは、限らない)
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