アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
File.√13
-
守りたい存在
*
「本当によろしいんですか?」
触れれば、自分が何より戻りたい時に戻る。が、代償は寿命。
不老という地獄へと落ちる。死なない体は周りの人間に置いていかれる。だが、不死ではない以上殺されれば死ぬ。
「みんなのことお願いね」
大丈夫、あの日に戻ればいいだけ。過去を変えるだけだ。触れた幹は何だか温かかった。
振り向く彼女はいつも通りの笑顔をして、そして消えた。
*
「かはっ.....、げほっ」
あぁ、ここかとすぐに分かった。必死な顔をして覗き込んでくる皆に笑みが零れた。苦しいのだけど、嬉しくて。辛いのだけど、楽しくて。
今となってはどこが始まりかすら分からない。この牢獄が始まりだったのかもしれない。
「あ、れ?私なんで.....」
「姉上、迎えに来たよ。逃げよう」
掴んでくれる手を振り払った。ここで変えなければ来た意味がない。驚いて振り向いたその顔に罪悪感でいっぱいになる。
だけど、大丈夫。みんななら大丈夫。ごめんね。ちゃんと、七人と二人に戻すから。あの日の願いは打ち消すから。
「ダメだよ。早く屋敷に戻りなさい」
「何言って.....」
「久義、潤、大輔、孝行、淳司、慎之介、そして聡」
ごめんね、というと衛兵が入ってきて泣き喚く七人を連れて行った。そして、残された安元は牢獄の前に座り込んだ。希偲はにっこりと笑うと倒れた。そして、誰かが階段を降りてくる
「失礼します、姫巫女様の処刑を仰せつかった鈴村健一と申します」
黒い洋服に大きな鎌。死神かと悟った。だけど、それでよかった。それぐらいじゃないと、この呪われた魂は消えてくれやしない。
引きずられるように牢獄を出される。振り向くと泣き叫ぶ三浦がそこにはいた。だけど、その時にはもう耳が聞こえなくなっていた。
死神もとい鈴村と安元とそれから二人の男性が何も無い空間にいて、だけどよくは見えなかった。きっと、視力すら失いかけていた。
黒くて冷たい椅子座らされると安元を含め三人の男性が前に立った。
「【四獣神家】大蛇 安元洋貴」
「【四獣神家】龍神 鈴木達央」
「【四獣神家】猫神 島﨑信長」
振り下ろされた鎌に何の感触もなく意識は無くなった。
それが、[西彼杵 希偲]の最後の記憶、最後の記録。
*
「ねぇ、もう千年桜に着いたかな」
「姉さんの記憶が消えるのかな」
涙が止まらなかった。あの日自分たちが決めたことが彼女にとって最悪の決断だったということが受け止めきれなかった。
もし、過去が変わって未来が変わってどうなるんだろう。
気がつけば彼女は九人の物語の中心人物になっていてもう必要な人物になっていた。
「俺たちどうなるんだろうな」
「日野くん、ほんとは希偲を殺す気なんてなかったでしょ」
立花の言葉に日野が答えた。だけど、その瞬間みんな意識が絶たれた。
『当たり前だろ、大事な妹で姉で幼なじみなんだからな』
*
巡っていく過去はどんどん改ざんされ古い記憶は消えていく。まるで人生ゲームのように歩くと流れる映像にまるで映画を見ているような感覚に陥った。
そして、意識が再び浮上した時には全てが変わっていた。
*
「ねぇ、君たち誰?」
あの日の記憶は誰も持っていなくて
あの日から道が重なることはなくて
あれだけ彼女が願ったのにも関わらず
また九人は少しずつバラバラになった
*
忘れたくないんだけど、大切だったんだけど、このまま辛いのはいやで
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
53 / 60