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File.√13.8
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好きってことは、多分、そういうことなんだろう
*
「まさか、お前のSSが潤だとはな」
「私はあんげんが覚えてることのほうがびっくりだよ」
目の前でため息を吐く彼女はその昔幼なじみで友人の奥さんだった。同じ先祖返りで同じ『四獣神家』で呪われた運命を辿った同志だ。
「まさか、私以外にあの記憶を持つやつがいるなんて」
「消えなかったな」
あの日九人の先祖返りが約1200年の人生をやり直した。どうしょうもないほどに重苦しいあの日々は今や覚えているものはほとんどいないだろう。
「近藤は覚えているんじゃないか?」
「どうだろう。今世でみんなと会ってないの?」
「みんなバラバラだよ。2,3人で固まってはいるけど」
あの日彼女を自ら殺した自分は三浦や菅沼、福山と共にいることが耐えられなくなり自害した。だけど、再び産まれる性はどうしょうもなく皆から逃げに逃げた。
「この前久義に会ったよ。潤と交代したみたいに体弱いみたい」
楽しそうに話す彼女はこの世に生きるために色んなものを代償に今を決めた。その代償に左手はあっても動かないし右目もあの日から先天性の失明となった。一人で長時間歩くことは出来ないし走ることなんて以ての外だ。
「でも、幸せそうで良かった」
そう言った彼女は立ち上がって何も言わずに去ってしまった。
その後ろ姿は細くて弱々しいのにとても力強いものを感じた。
*
大きな和テイストの屋敷は山の中にあって車が無ければやって来るのは困難だ。
ここは今日から仕事場になるこの広い屋敷には数人の世話係と今日から自分の主となる人間しか住んでいない。
「こんにちは、今日から孝行様のSSをさせていただきます安元洋貴です」
「お待ちしておりました。主様はここの突き当たりを左に行った縁側におられます」
世話係の女性はそう言うと頭を下げどこかに行ってしまった。言われた通りに進むと突き当たってすぐのとこに『ここより主とSS以外の進入を禁ず』と張り紙がしてあった。
「あーあ、暇だな」
そう言って縁側で足をぶらぶらさせている男は寂しそうに呟いた。
「よう、玄関隙だらけで無用心だな」
「こんなとこ誰も来ないよ、君みたいな物好きじゃないと」
そう言った彼は嬉しそうに楽しそうに笑った。
*
その昔、鬼と化した穏獣に恋した愚かな大蛇の話
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