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「……ふぅ。
驚かせて悪かったね、稔くん、蓮くん。」
「もー、全くぅ…………………ってダレですか?!」
海が申し訳無さそうに笑い、
蓮は激しく動揺する。
「え、何ですか?!に、二重人格なんですか?!」
「落ち着け、蓮」
「イテッ!」
稔が蓮をパシッとたたき、蓮は黙る。
それを見て、海はフフッと笑った。
「ほんとに稔くんは冷静なんだね。
蓮くんは本当は何考えてるか分からないけど
おもしろいし。これにあの空くんが入れば
そりゃ楽しいはずだね!」
そして海は二人の手を引っ張って立たせた。
落ち着きを取り戻した蓮が、再度海に尋ねる。
「海さん、ですよね。
もう一人の海さんとかじゃないですよね?」
「僕は正真正銘の織田海だよ。」
「一人称が"僕"……。あ"ぁ俺の
海さんイメージ図が崩壊していく…。」
やはりうろたえてしまう蓮を一瞥し、
稔は頭を軽く下げた。
「すいません、
こいつ本当は馬鹿かもしれません。」
「あははっ、ほんと楽しいね!」
理科準備室が和やかな空気になる。
稔が早速疑問を投げかける。
「あの、どうして海さんは普段あんな言動を…?」
「うーん……。ごめんね、今はまだ言えないんだ。」
海が悲しそうな顔をしてこのように答えたため、
稔はそれ以上は追及しなかった。
代わりに、海が新たな話題をふる。
「空くんの件なんだけど……。
昨日何かあったらしいんだよね。
それについては二人とも知ってる?」
稔と蓮がうなずき、海は話を続ける。
「でも、その"何か"が一体なんなのか、
誰も知らない。空くんの様子からして、
だいぶ辛いことだったに違いない。」
「俺と稔が、部屋に入る前の空に
声をかけたけど、全然反応なかったんですよ!」
蓮の言葉に、稔はゆっくりと首を縦にふった。
海も深くうなずく。
「きっと空くんは僕達を心配させまいとして
そのことに対しては何も言わないだろうから、
僕たちは空くんから話を聞き出すことは
できないと思う。
でもね、だからって見過ごせないよね?
自分たちにできる最大限のことをしなくちゃね!」
そう海が話し終えると、
「海さん超かっけぇッス!!
分かりました!頑張ります!」と、
蓮が興奮気味に言う。
そして稔は深々と頭を下げた。
「分かりました…。
空は……海さんに任せます。
だから、1番近くで守ってあげてください。
俺達は友達として、空を見守ります。
だから…、空をよろしくおねがいします!」
海は少し照れながら「任せて!」と、
元気よく答えた。
「それじゃあ、今日はもう解散!
二人とも本当にありがとね!」
「はい…!失礼します!」
そうして3人の秘密会談は終わったのだった。
寮へ帰る途中、稔と蓮の間には
沈黙が流れていた。
ただしその沈黙は重々しいものではなく、
二人がそれぞれに心情を整理しているためだった。
蓮が口を開き、稔は静かに答える。
「海さん……イイ人だったな。」
「……あぁ。」
「空、安心して任せることができるよな。」
「……あぁ。」
「入学式の日のトイレでの
フェアプレー協定、無くなっちゃったな……。」
「……泣くなよ。」
「泣かない。それ、むしろ俺のセリフ。」
二人はクスッと笑いあった。
稔と蓮の通った道には、
小さな水滴の跡が残っていた。
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