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類は話を続けた。
「しかし、あることが起こった。
俺が大学進学を目前に控えたときだった。
兄とお義姉さんが二人して深刻な顔をして
俺に話をしてきたんだ。
内容は
親の生命保険のお金……、
まぁ手っ取り早く言えば遺産、だな。
でも両親が死んだのは
十年以上も前。
兄はそのことを俺に一切話してくれなかった。
かえって、そのお金のおかげで今まで
兄弟だけでも過ごすことができたのかなって。
でも、兄はその金に
全く手をつけていなかった。
それを使えば、兄はバイトの量を
減らして多少遊ぶことが
できたかもしれないのに……。
兄は、一円も使わず
ずっと貯め続けていたんだ。
……俺がそれを必要としたときのために…。
その話をされたときは驚いたし、感謝もした。
何より、お義姉さんが俺たち兄弟のことを
理解してくれていたことに本当に感謝した。
そしてこのお金は俺の大学費用に
あてるということで話はついた。
でも、俺はそのときこう思った。
”このお金があれば、
兄は義姉さんやエースをもっと幸せに
することができるんじゃないか”ってな。
そしてこうも思ってしまった。
”俺は養われるばかりの
子どもじゃない!”って。
それについて兄と大喧嘩した。
結局お金は俺の大学費用になったが、
俺は兄の自己犠牲的な姿が急に嫌になって、
家出半分で違う県の大学に進学した。
俺がエースを最後に抱いた日の翌朝、
何も言わずに家を出てから、
エースとはそれっきりだった。
そしてこの学校で再会したわけだ。
はじめはビックリしたよ。
手足がただ長くなっただけかと思いきや、
顔つきがさらに義姉さんに似てきていて
その成長ぶりに感動したよ。
でもなかなか話すことができなかった。
俺はまた以前のような儚くてもろい
関係になることを恐れたんだ。
そんな俺の態度を、
あいつは誤解してしまったようだな。
何とかして俺の気をひくために
様々なことをしてきたが、
徐々に俺以外のやつも巻き込むようになり、
織田陸の存在も相まって、
現在にいたるわけだ。
去年未熟だったあいつは、
織田陸とともにある事件を起こした。
それは外部には全く知られていないが、
巻き込まれたやつの消息は……
分かっていない……。
そいつは海と非常に仲の良かった
生徒だった。おそらく陸の気に
障ったんだろうな……。
……海、悪かったな今まで黙ってて…。」
「……いえ……。」
海が険しい顔をして答える。
ギュッとこぶしを握り締める。
類はさらに続けた。
「はじめはエースも後悔していた。
だが陸のささやきで、それも
忠誠というう名の開き直りに
帰られてしまった。
だが、俺は信じている。
あいつなら、本当は織田陸の行為が
”悪”と感じることができると。
そして分かり合えることを……。
俺はあいつを救いたい。」
類の話が終わり、蓮がつぶやく。
「俺、”打倒!織田陸!”ってスローガン掲げて
戦うべきだと思う……!」
すかさず稔は蓮の言葉に待ったをかけた。
「蓮、俺たちが言えた話じゃないだろう。
ここは”リーダー”の言葉を聞こう。」
そう言って稔は空に視線を向けた。
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