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「あー困ったな……。」
ブツブツとつぶやき
ウロウロしている教頭を背にして、
類はコーヒーを飲みながら
職員室の窓から景色を眺めていた。
しかし、頭に浮かぶのは
景色や天気に関することではなく、
エースのことばかりである。
自分のペースを狂わす数少ない存在であり、
実際、今も狂わされている。
「あのーそのー、蔵本先生、
ちょっといいですか、ね。」
肩をたたかれ振り返ると、
目の前にはハンカチを額にあてながら
必死に笑顔をつくろう教頭がいた。
類は大学在学中にこの松崎宮之原第三高校で
教師となることを認められたという
偉業を成し遂げており、
それは教員を目指す者から
ベテラン教師の間でも有名な話であった。
オマケに、容姿は超がつくほどの
イケメンである。そのため、
類は教頭クラスの人物からも
恐れられているのだ。
類は教頭の緊張をほぐすため、
笑顔で答える。
「どうかしましたか、教頭先生。」
そのとき教頭の顔が赤くなったことは
見なかったことにして。
「あぁ、実はですね、
二年生の数学の教員が一人
用事で出ていってしまったもので…。
あまりに突然のことだったので
そのクラスの生徒たちには
何も言えてないもんで……。」
”なるほど……。”
類は教頭が何を言いたいのか察する。
「分かりました、僕がこの時間の
そのクラスの数学に行きます。」
「おお、ありがたい。その先生は
次の時間までには帰ってくると
言っておりましたんで、この時間の
授業だけでかまいませんですのでハイ~」
”なんか変な敬語になってますよ…”
と、類は心の中でクスッと笑う。
「えっと、じゃあどこのクラスですか?
急いでいかないと……。」
「あ、はい、二年三組ですヨ~。」
「二年……三組……。」
”エースのクラスか……。”
「ん?どうかしましたかな?」
「あ、いえ…。」
類が少し動揺していると、
突然教頭が類の尻をそっと撫でた。
類はゾワっとして体が震えた。
「いやぁ、若いもんはイイですなぁ。
先生も立派だがまだまだ若い……。
どれ、今夜飲みに行きませんか?
教育の未来についてでも……ネ。」
「あ、いや私は遠慮しておきま……」
このとき類は職員室内を見まわしたが、
教頭と自分しかいなかった。
類が断ろうとしたとき、職員室の戸が
ガタッと開いた。
「失礼します、二年三組の蔵本です。
この時間の数学なんですが
何をすればいい、で、しょ…うか……」
エースだった。
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