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「ん……。」
頭にモヤがかかったような意識の中、
海はゆっくりと目を開けた。
「ここは……?」
見たことがない狭い部屋だ。誰かの生活空間なのか、
エアコン、テレビ、一人用ののベッドなどがある。
海はその部屋の壁にもたれるかかるように座っていた。
1つだけある小さな窓から差し込む西日が
部屋の中を照らす。その窓の外には
雑草が生えているのが確認できる。
その時、海は両腕に妙な感触を抱いた。
その正体となるものが、
無機質なジャラ……と音を出す。
”くさり…?”
短い鎖にガッチリと両手がホールドされており、
身動きがとれない。海は徐々に頭がさえてきて、
こうなった経緯を思い出す。
「たしか……
ハンカチで口を覆われて、……誰だっけ……、
…………!!」
海の脳内で、あのときの瞬間が
スローモーションのように
はっきりと確実に再生される。
笑いながら、ハンカチで自分に薬を盛った
もはや悪魔と呼べる存在……
そのとき、部屋のドアが開き、
海は入ってきたその”悪魔”の名を口にした。
「陸!!」
「おっはよー海!」
おぼんに料理をのせて陸は海に笑顔を向けた。
それとは反対に、
海は嫌悪感丸出しの顔を陸に向ける。
だが、陸はそれに気づかない。
「それ…食堂のテイクアウト料理だよね。」
「うん、そうだ。
冷めないうちに食べよう!!」
「こんな場所、校内にあった?
ここ、いわゆる地下室だよね。」
「あぁ、まあな。
あ、手使えないよな、俺が食べさせてやる。」
そう言って陸は海の前に来てしゃがみこみ、
食べ物を載せたスプーンを海の口に運んでいく。
「ほら、海。口開けろ。腹、減ってるよな?」
「………………………っ!!」
海は顔を思いっきり横に向け、
食べ物がのったスプーンを振り払った。
スプーンがカシャンと音をたてて冷たい床に落ちる。
「……なにすんだ、海!!あぶねぇだろ!!
……………って、顔、火傷してるじゃん!!」
海は自分では確認できないが、確かにほほの
辺りがヒリヒリとする感じはあった。
「小さいから良かったものの……。
待ってろ、冷やすもの持ってくる!」
と言い、陸は扉の方へ向かう。
その背中に、海は言葉を投げつけた。
「そんなの要らない!!」
陸の動きがピクッと止まる。
「こんなところに僕を閉じ込めて
今度は何を企んでるの?!
また空くんに何かする気?
僕がいなくたって彼はもう色んな人に
守ってもらえる。きっとエースも……!!」
陸は振り返り、海に微笑みかけた。
「もう俺は誰も傷つけない。
俺はただ、お前を守り抜く、
それだけだから……。」
陸の笑顔と言葉に、海は言葉を返せない。
「……じゃあ、冷やすものを持ってくるから。」
そう言って、陸は重い扉を開けて部屋から
出ていった。
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