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「…そっか、だから荷物…その袋しか持ってないんだね」
「うん…着替え、ごめん」
「大丈夫だよ、それもう着ないやつだし」
僕が今これを飲みたいと思っていたこと、なんでシンは分かったんだろう。
喉を流れるホットミルクは蜂蜜を垂らしたもの。その温かさに足先が解れていくのが分かって、安心して、少し笑うくらいの余裕はできた。
「めがね…」
「ん?」
シンの真っ黒な髪によく似合う、マットブラックのフレーム。
「…眼鏡、してるとシンの部屋に来たんだなって思う」
視線を受け止め、微笑んだシンはそれを外すと僕の耳に引っ掛けた。目の前に見えるナイトテーブルが少しぼやけてしまう。
「俺が目ぇ悪いの、ちょっと忘れてたでしょ」
「…うん。シンが眼鏡するの、学校じゃ見ないから」
「ふふ…どう?ひぃはたしか目…良かった気がするけど」
「うん。ちょっとぼやけるもん」
「俺もぼやけてる?」
翳した掌をひらひらと揺らすシンがだんだんと近付いてくる。
もともとベットに座っている僕の隣に腰掛けていたのだけれど、より一層狭まった距離に僕は笑った。
「んー…ぼや、けてるかな?」
「そう?」
「ふは、…シンってば、ちかい!」
吐息のかかる距離。
さっきお風呂に入ったシンからは僕と同じ香りが立ち上る。
「………ね、まだぼやける?」
「もう大丈っ……ん、…っ!」
ふいに感じた、唇にあたる柔らかな感触。
僕にだって分かる。
それがシンの、
「ん、ン」
「……あま」
唇だってこと。
「―・・・っ…?!」
最後にぺろりと唇を舐められて、言葉も出ない。なんで、シンが、僕に
「牛乳ついてた」
「えっ」
「牛乳ついてたよ?」
「……っ、わ、」
「もう取れたけど……どうかした?……ああ、…もしかして。キ、」
「な!、―・・・っ…なんでも、ない!」
穴があったら入りたい。
知らなかった。ずっと付いてたのかな。いくら友達でもそれは、はず、恥ずかしすぎる。
「でも、言ってくれればよかったのにっ…!」
「…少し元気でたね」
「え」
「元気無かったから」
「あっ…」
全部、僕のことを気遣ってくれてたってこと?
わざとからかうようなことをしたってことだろうか。
…ふと僕は目の腫れが少し治まっていることに気がつく。
「…あ、ありがと?」
「ううん…大丈夫だよ。それに…」
「それに?」
耳元にするりと滑り込んだ手がフレームを持ち上げる。
「し、ん?」
「それに…キスをするなら…こうやって」
「……?」
「…っ!…っん」
ちゅ、と音を立てて離れた唇を目で追う。
シンはにやりと笑った。
「眼鏡、外すでしょ?」
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