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「どうやって出会ったんですか」
「へ?」
「…雛森さんと、どうやって出会ったんですか」
テレビから流れる音がここまで聞こえてくる。
美味しい紅茶が飲みたいと言われて水無月君とキッチンに並んだ。
部屋主の指示を伺いながら、もくもくと作業をしていた僕を止めたのもやはり彼で。
「それは…」
口籠った僕に、彼はある種の勘違いをしたようだった。弾かれたように顔をあげる。
「あっ…単なる興味です。参考にしようとか…そういうわけじゃなくて」
水無月君はそう言って手をふった。
「ふは」
なんだかそれがおかしくて僕は笑ってしまう。
「なっ…なんですか…っ馬鹿にするならどうぞ、どうせ僕は」
「いや、違くて……それに、敬語…僕達、同級生なんだし」
「は……、っ…」
意味が分からない、そんな顔も束の間。朱を刷いた表情を引きつらせて彼は唇をわななかせる。
「…―・・っもう…!じゃあ遠慮なく聞くけど!どうやって知り合ったの?!」
「ええ…」
雨、本の匂い、大きい机に、硬い手のひら。それと金髪碧眼の……大好きなあの人。
教えたくない。
それに僕はもう、夕の恋人じゃない。
なのに。
どこかまだ、水無月君に対して心のゆとりがあるのは確かで。
(気持ち悪い…)
それでも目を強める彼に押されて、僕は重たい口を開いた。
「助けられ、て」
あまりにも簡潔的な言葉に彼は首を捻る。
「?」
「昔トラブルに遭って…それを」
「ああ………恩人、なんだ」
そうやって1つの言葉に纏められて、感じたのは。
「…っ…」
かつての僕と夕の関係は紙にさらりと書かれたような、そんな軽薄さを帯びて胸に入ってくる。
…違う。そんなのじゃない。
たしかに夕は僕の恩人で、だけどたしかに恋人だった。恩恵で繋がっていたわけじゃない。情が恋になったんじゃない。ただ単にそれは、トリガーだっただけだ。
「恩人で……恋人だよ」
“だった”とは、言えなかった。
水無月君は呟く。
「同じ恩人でも…」
「え?」
「僕も助けられたんだ」
「水無月君が、」
「光、でいいよ」
「えっと、…ひ…ひかる…が、夕に?」
知らない過去の存在に僕は驚くしかない。光はこくりと頷いて言葉を続ける。
「中等部の時だった。その時の僕、部活でいじめられてて。…いじめって言っても1人の先輩からなんだけど…それがその、性的な…」
尻すぼみに言葉を詰まらせる光。
性的な、いじめ。
…この箱庭で立ち込めた煙に出口はまず無い。
それはまるで、ビーカーの中に閉じ込められた線香のように。
「それでね、…先輩に脅されて…犯されそうになった時、雛森さんが助けてくれて。」
「そうなんだ」
「でもね」
光は続ける。
「雛森さんの髪色は、金色のままだったよ」
「へ…」
「朝陽、雛森さんと付き合ってからいじめられたんじゃない?」
急に変化した話題。
何が言いたいのか分からない僕は、促されるままに頷いた。
「これはたぶん、僕の考えだけど…」
「これ以上目立たないようにって、少しでも朝陽に迷惑がかからないようにって…染めたんじゃないかな」
「………っ!」
そうだ、あれは、
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